リボソーム遺伝子の新たな機能 〜染色体の凝縮の場として〜

原核生物遺伝研究室・仁木研究室

Multiple cis-acting rDNAs contribute to nucleoid separation and recruit the bacterial condensin, Smc-ScpAB

Koichi Yano, and Hironori Niki

Cell Reports, Vol. 21 Iss. 5, October 31, 2017 DOI:http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2017.10.014

長いDNA分子は折れ畳まれ、染色体として細胞内に収納されている。この折り畳みの一端を担っているのがコンデンシン複合体である。コンデンシン複合体はバクテリアからヒトまで共通に保存された生物の基本的因子の一つである。バクテリアのコンデンシン複合体は、複製開始点付近の染色体領域に結合し、複製した染色体DNAを順次折り畳んで行く。こうして、2つの姉妹染色体へと分けられる。この時、バクテリアのコンデンシン複合体は複製開始点付近の、どの染色体領域を選んで結合しているのか?この点についてはこれまで不明であった。

今回、私たちは枯草菌を使い、複製の開始点付近に散在している複数のリボソーム遺伝子が、バクテリアコンデンシンの結合の場になっていることを見出した。私たちは、これまでにもバクテリアコンデンシンタンパク質が二本鎖DNAよりも一本鎖DNAに対して、より選択的に結合をすることを明らかにしている(Niki & Yano, 2016)。リボソーム遺伝子の転写は常に活発である。さらに、リボソーム遺伝子では転写されたRNAがDNAと結合したいわゆるR-ループを形成し、転写で生じた二本鎖の開裂を安定化させる。そのため、リボソーム遺伝子では他の遺伝子領域よりも一本鎖DNAが露出しやすい。このことが、一本鎖DNAに結合しやすいバクテリアコンデンシン複合体をリボソーム遺伝子に特異的に結合させている原因だと私たちは考えている。複数のリボソーム遺伝子が複製の開始点付近に散在しているのはリボソームRNAを増産するためだと、これまで考えられてきた。しかし、それだけではなく、このリボソーム遺伝子の配置はコンデンシン複合体によるDNA凝縮の場としても役立っていることが今回の研究から明らかになった。

Figure1

環状のバクテリア染色体は、1箇所の複製起点(黄色の丸)から複製を開始し、姉妹染色体を形成する。枯草菌のコンデンシンであるSmc-ScpAB複合体は、複製起点に散在するリボソーム遺伝子(rDNA、ピンクの丸)に結合し、リボソーム遺伝子以外の場所に結合したSmc-ScpAB複合体と共もに相互作用して、2つの姉妹染色体の分離を助ける。また、Smc-ScpAB複合体はSpo0J(ParB)-parSというDNAタンパク質複合体からも染色体に結合して、複製した染色体の左右のDNA鎖を対合させるように機能している。