右心室以外の心臓を構成する細胞へ分化する前駆細胞を発見

発生工学研究室・相賀研究室

Sfrp5 identifies murine cardiac progenitors for all myocardial structures except for the right ventricle

Fujii Masayuki, Akane Sakaguchi, Ryo Kamata, Masataka Nagao, Shilvia M. Evans, Masao Yoshizumi, Akihiko Shimono, Yumiko Saga, and Hiroki Kokubo

Nature Communications. DOI:10.1038/NCOMMS1466

心臓は、発生過程において最も初期に形成される器官です。以前、心臓は発生初期に形成された心臓原基からすべての構造が形成されると考えられていましたが、最近、心臓原基の腹側領域にある細胞が、流出路から右心室にかけての領域を構成することが明らかとなりました。この細胞領域が二次心臓領域(Second heart field, SHF)、これまでの心臓原基は一次心臓領域(first heart field, FHF)と呼ばれています。二次心臓領域は心臓形成に寄与する心臓前駆細胞として認識されているのに対し、一次心臓領域はE7.5においてすでに心筋特異的分化マーカーを発現していることから、一次心臓領域に寄与する心臓前駆細胞は明らかにされていませんでした。また、刺激伝導系の一部を生み出す静脈洞についても、その前駆細胞については明らかになっていませんでした。

今回、Wntシグナルの負の制御因子であるSecreted frizzled-related protein (Sfrp)5 を発現する細胞の系譜解析を行なった結果、Sfrp5遺伝子を発現した細胞が、右心室以外の心筋と、静脈洞へと分化することから、右心室とそれ以外の心臓部分では、細胞系譜が異なること、またSfrp5発現細胞から刺激伝導系が生じる可能性が明らかになりました。今後Sfrp5遺伝子を発現する細胞の性質を詳しく解析することで、心房や心室を構成する心筋と、刺激伝導系を構成する特殊心筋の両心筋の誘導法が確立できることが期待されます。この研究は、以前発生工学研究室の助教であり現在は広島大学に所属する小久保博樹博士が、総研大の学生坂口あかねさんと推進した研究であり、遺伝研共同研究の成果となります。

Figure1

図 新たな心臓形成過程の模式図
 胎生7.5日において、Sfrp5遺伝子が発現した細胞が左心室、心房の一部へと寄与する前駆細胞であること、また、Sfrp5遺伝子発現細胞の一部は、流出路と心房の一部へと寄与することを見出した。これまでの心臓形成のモデルを書きかえる重要な発見です。


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