鳥類の進化に関わったDNA配列群を同定―鳥エンハンサーの発見―

Press Release

Functional roles of Aves class-specific cis-regulatory elements on macroevolution of bird-specific features

Ryohei Seki*, Cai Li*, Qi Fang, Shinichi Hayashi, Shiro Egawa, Jiang Hu, Luohao Xu, Hailin Pan, Mao Kondo, Tomohiko Sato, Haruka Matsubara, Namiko Kamiyama, Keiichi Kitajima, Daisuke Saito, Yang Liu, M. Thomas P. Gilbert, Qi Zhou, Xing Xu, Toshihiko Shiroishi, Naoki Irie#, Koji Tamura#, Guojie Zhang#
(* co-first authors, # co-corresponding authors)

Nature Communications 8, Article number: 14229 (2017) DOI:10.1038/ncomms14229

プレスリリース資料

鳥が恐竜の一部から進化したことは確実視されていますが、羽毛やクチバシなどの鳥らしい特徴をもつようになった仕組みはほとんどわかっていませんでした。東北大学生命科学研究科の田村宏治教授のグループは、東京大学の入江直樹准教授、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の関亮平研究員・城石俊彦教授、ならびに中国BGI・コペンハーゲン大学らの国際共同チームにおいて、48種の鳥の全ゲノムDNAを他の動物のゲノムと比較することにより、鳥らしさをもたらしているDNA配列を探しました。解析の結果、鳥へと進化する過程において、新しいタンパク質を作る配列(または遺伝子)の獲得はほとんどなく、鳥への進化には、むしろ遺伝子の使い方を変えたことが決定的な役割を果たしたことが明らかになりました。遺伝子の使い方を決めるDNA配列のことを一般的に「制御配列」と呼び、遺伝子のスイッチをオンにしたりオフにしたりします。研究チームが見つけたのは、スイッチをオンにする鳥特有の制御配列、すなわち鳥エンハンサーと言えます。例えば、今回見つけた鳥エンハンサーの1つは、ある遺伝子(Sim1遺伝子)を、風切羽の作られる翼(前肢)ではたらくようにしていることが明らかになりました。さらなる解析の結果、Sim1遺伝子が翼の風切羽だけでなく尾羽が形成される領域でもはたらいていることもわかりました。Sim1鳥エンハンサーはまだ恐竜がいた頃の時代に獲得されていた可能性が高く、風切羽と尾羽が同時に恐竜で進化していたというこれまでの知見と合わせて考えると、このような鳥エンハンサーを使って恐竜も風切羽や尾羽を進化させていた可能性があります。

このように、鳥の進化過程において新しい遺伝子の獲得はほとんどなく、既にもっていた遺伝子の使い方を変えることで、鳥らしい特徴を進化させてきたことがわかりました。鳥の進化に決定的に重要だったのは、新しい遺伝子ではなく、既にもっていた遺伝子の新しい使い方だったのです。

本研究は、科研費(基盤研究B、特別研究員奨励費)、最先端・次世代研究開発支援プログラム(ライフ・イノベーション)、ナショナルバイオリソースプロジェクト(ニワトリ・ウズラ)などの支援を受けて実施されました。

Figure1

鳥類48種のゲノムと鳥類以外の動物9種のゲノムを比較することで、鳥だけがもっているDNA配列を特定したところ、そのほぼ全て(99.69%)がタンパク質を作らないものであった。 また、そうした DNA配列の1つが鳥の飛翔能力に重要な風切羽の形成に関与していることが明らかになった。