Histone H3 modifications are widely reprogrammed during male meiosis I in rice dependently on MEL1 Argonaute protein
Hua Liu, Ken-Ichi Nonomura
Journal of Cell Science, Published online, 12 August, 2016 DOI:10.1242/jcs.184937
減数分裂は、複製を介さない2回の連続した分裂により、染色体数を半減させる特殊な分裂であり、遺伝情報の次世代への「安定的伝達」に加え、両親から受け継いだ1対の相同染色体の対合・組み換えを通じた「遺伝的多様性の創出」に不可欠の仕組みです。
今回は、染色体の構造や遺伝子発現の制御に重要なヒストン修飾(用語解説)と減数分裂の関係に着目しました。ヒストンH3の9番目のリジン残基のジメチル化(H3K9me2)は植物では一般的に遺伝子発現を抑制し、クロマチン構造を密にするよう働くと考えられています。同じ位置のアセチル化(H3K9ac)は逆に遺伝子発現を活性化します。そこでH3K9me2およびH3K9acに対する抗体を用いて、H3修飾を減数分裂の異なる時期で比較しました。すると減数分裂移行期の前後で、H3K9me2は広範囲で増加し、H3K9acは逆に激減していました。この現象は、減数分裂を支える仕組みの一つと考えられます。
減数分裂におけるヒストンH3修飾のリプログラミング(LMR)は、以前に私たちが同定した生殖細胞特異的Argonaute蛋白質(用語解説)MEL1の突然変異体で欠損していました(図1B)。今回の結果はイネMEL1が、LMRの制御を介して減数分裂の進行を促進している可能性、そして植物の減数分裂におけるRNAサイレンシング機構の重要性を示すものです。
本成果は、学術振興会科学研究費基盤研究 (A) (25252004) および遺伝研博士研究員制度の支援を受けて実施しました。
減数分裂におけるヒストンH3K9me2は MEL1依存的にリプログラムされる
(A) 正常なイネの花粉母細胞(減数分裂細胞)では、減数第一分裂に移行する過程で、H3K9me2を示すシグナル(赤)が染色体全域で顕著に増加する。染色体DNAはDAPI(青)で染色。PAIR2(緑)は減数分裂の相同染色体対合に必須のタンパク質であり、この細胞が確かに減数分裂期にあることを示している。スケールバーは5 µm。
(B) mel1突然変異体の花粉母細胞。PAIR2シグナル(緑)から細胞が減数分裂に入っていることがわかるが、H3K9me2の蓄積がほとんど起こっていない。
<用語解説>