2015/06/11

クラフォード賞授賞式がおこなわれました

太田朋子名誉教授とリチャード・ルウォンティン米ハーバード大名誉教授に2015年のクラフォード賞が贈られました。授賞に関する3日間の行事「クラフォードデイ」が5月5日から7日にかけておこなわれました。日本学術振興会(JSPS)ストックホルム研究連絡センターよりご提供いただいた写真や資料とともに、クラフォードデイの様子を詳しくお伝えします。

クラフォードデイ プログラム(PDF/1.3MB)

授賞式 プログラム(PDF/78KB)

News & Topics クラフォード賞受賞

Close-up!インタビュー 太田朋子先生のクラフォード賞受賞が決定

遺伝学の先達 太田朋子先生インタビュー

太田名誉教授のクラフォード賞受賞について (PDF/1.4MB)

(撮影:JSPSストックホルム研究連絡センター)

初日の記念シンポジウムと2日目の授賞式は、スウェーデン王立科学アカデミー(KVA)の建物でおこなわれました。赤レンガの建物は緑に囲まれ、木々に白い花が咲いて、とても良い季節だったそうです。

(撮影:JSPSストックホルム研究連絡センター)

シンポジウムではまず太田博士が「進化における『ほぼ中立』―遺伝子型と表現型をつなぐ」という題で講演しました。近年の生物学的知見、例えば、タンパク質の構造・機能のダイナミクスや、多様な遺伝子発現制御メカニズム間の相互作用が、ほぼ中立説とどのように結びつくかが論じられました。続いて英国やスウェーデンなど各国の6名の進化生物学者が、生物集団における遺伝的多様性についてさまざまな観点からの講演をおこない、休憩時間やランチタイムにも活発な議論が交わされました。詳しいプログラムや講演動画はクラフォード賞公式ウェブサイトで公開されています。

KVA事務総長による開会挨拶

太田博士の講演

太田博士の講演

ブロマム博士の講演

休憩時間

(撮影:JSPSストックホルム研究連絡センター)

翌日の授賞式では、前日と同じ会場が華やいだ雰囲気に包まれました。出席者にウェルカムドリンクが提供される傍ら、式典での演奏を担当するストックホルムコンサートオーケストラのメンバーが最終調整をおこないます。太田博士は、リハーサルや写真撮影、関係する方々との面会などのスケジュールを終えて式に臨みました。カール16世グスタフ国王王妃両陛下がご臨席され、太田博士と、ルウォンティン博士の代理を務めるアンドリュー・ベリー博士とに、国王陛下から賞状とメダルが手渡されました。国王陛下と握手を交わした太田博士は「私にとっては緊張の連続でしたが、国王陛下はとてもにこやかで、素晴らしいひとときでした」と振り返ります。

クラフォード賞委員会による発表

壇上の太田博士とベリー博士

賞を受け取る太田博士

楽団員による演奏

開場前の風景

クラフォードデイ プログラム

(撮影:JSPSストックホルム研究連絡センター)

授賞式終了後はグランドホテルに移動して晩餐会がひらかれました。メインテーブルの国王陛下と日本国大使閣下との間に太田博士の席があり、とても緊張したそうですが、国王陛下は気さくな方で、大使閣下も和やかにさまざまなお話をしてくださったそうです。太田・ルウォンティン両博士の業績やクラフォード財団の紹介に続いて、最後に、今回出席できなかったルウォンティン博士から事前に送られたメッセージを主に代読する形で太田博士がスピーチしました。国王王妃両陛下やクラフォード財団、王立科学アカデミーへの感謝とともに両博士の研究概要を紹介し、実験と理論とが両輪のように科学を進歩させるというメッセージが趣旨だったそうです。

(撮影:JSPSストックホルム研究連絡センター)

最終日にはクラフォード財団の所在するルンドに移動し、ルンド大学で受賞記念講演会がひらかれました。オーストリアのグレゴール・メンデル植物分子生物学研究所やルンド大学の進化生物学者とともに、太田博士は「進化における『ほぼ中立』という概念の発展」という演題で、中立説の歴史もまじえた講演をおこないました。

(撮影:スウェーデン王立科学アカデミー)

帰国後の5月13日、記者の方々向けの報告会が遺伝研でひらかれました。今回の受賞について太田博士は「思いがけない知らせに驚いた。私の研究内容はひじょうに基礎的で、私自身あまり情報発信をすることもなく、海外にしょっちゅう出かけることもなかった。最近になって『ほぼ中立説』を支持するデータが蓄積し、主に若手研究者からの支持が増していると感じていた。それだけでも嬉しかったので、今回の受賞は上乗せの喜びだと感じている」と語っています。

(撮影:国立遺伝学研究所)


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