2015/05/13

シロイヌナズナの世代をこえるDNAメチル化はゲノムワイドの負のフィードバックで制御される。

育種遺伝研究部門・角谷研究室

Genome-wide negative feedback drives transgenerational DNA methylation dynamics in Arabidopsis.

Tasuku Ito, Yoshiaki Tarutani, Taiko Kim To, Mohamed Kassam, Evelyne Duvernois-Berthet, Sandra Cortijo, Kazuya Takashima, Hidetoshi Saze, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama, Vincent Colot, Tetsuji Kakutani PLoS Genetics Published: April 22, 2015 DOI:10.1371/journal.pgen.1005154

DNAメチル化はトランスポゾンや遺伝子の活性制御に重要です。植物においてはDNAメチル化の有無が世代をこえて継承されます。しかしながら世代をこえて継承されるDNAメチル化パターンの動態を制御する機構はほとんどわかっていませんでした。シロイヌナズナのクロマチンリモデリング因子DDM1(Decrease in DNA methylation)をコードする遺伝子の変異体では、トランスポゾンや反復配列のDNAメチル化が低下し、数世代後にはさまざまな発生異常が観察されます。今回、全ゲノムのDNAメチル化を調べることで、ddm1変異がゲノム全体でのDNAメチル化低下とともに数百の座でDNAメチル化の上昇を引き起こすことがわかりました。DNAメチル化低下はddm1変異体の1世代目から観察されますが、メチル化上昇の効果はddm1の1世代目ではあらわれず、数世代後においてのみ観察されます。さらに、DNAメチル化の減少した染色体を野生型下に導入すると、これが数世代後にはトランスにDNAメチル化上昇を引き起こしました。これらの結果は、世代をこえてゲノム全体のDNAメチル化を制御する負のフィードバックの存在を示します。この機構はゲノム中に一定の割合でDNAメチル化された領域を「分化」させるのに重要と考えられます。

本研究は、新領域融合研究センターの生命システムプロジェクトの支援で藤山研究室との共同研究として行われました。

Figure1

(パネルA)ddm1変異体における異所的シトシンメチル化上昇。9世代目(9G)のddm1変異体でメチル化が蓄積しています。このような異所的DNAメチル化上昇は1世代目(1G)ではみられません。また、野生型個体にddm1由来の染色体を多量に導入した系統(epiRIL98)でも異所的メチル化がみられます。

(パネルB)同様の現象は数百の遺伝子座で再現性よくみられます。4系統の1Gおよび9G ddm1で、異所的メチル化を示した遺伝子の数を示しました。


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