Power law relationship between cell cycle duration and cell volume in the early embryonic development of Caenorhabditis elegans
Yukinobu Arata, Hiroaki Takagi, Yasushi Sako, and Hitoshi Sawa細胞サイズは細胞周期時間を決定する要因の一つである。トロント大学の増井禎夫教授らは、アフリカツメガエル初期胚における細胞周期時間は、細胞半径の2乗に比例して伸長することを見つけた。この結果を基に、彼らは細胞周期時間が細胞表面の活性によって決定すると言うモデルを提唱した。しかし、この“2乗ベキ則”は脊椎動物であるツメガエル以外の動物胚では検証されていなかった。我々は、無脊椎動物である線虫C. elegans 初期胚でも細胞周期時間と細胞サイズの関係がベキ則に従うことを見つけた。ただし、細胞系譜ごとのベキの値は3つのグループに分類され、いずれの系譜のベキ値もツメガエル胚の値よりも小さかった。興味深いことに、細胞サイズと細胞核サイズの間にもベキ則が成立していた。細胞質と核の相互作用を想定して細胞と核サイズの比のベキ値を求めると、そのベキ値が「最もサイズ—時間の相関が強い細胞系譜」におけるサイズ-時間のベキ値にほぼ一致することを見つけた。この「サイズ—時間」と「細胞体積—核体積」の間のベキ値の一致から、我々は、「C. elegans 初期胚におけるサイズ—時間の関係が、細胞と核サイズの比という幾何的な制約により決定している」という新たなモデルを提案した。他の動物種でも同様の制約により、細胞周期時間が決定している可能性がある。
本研究は理化学研究所および奈良県立医科大学との共同研究で行われました。
細胞周期時間と細胞体積は、両対数グラフ上で直線的な関係(ベキ則)にある。分類された3種のベキ値を示す細胞系譜の内、AB細胞系譜における結果を表示した。