2015/02/03

痛風の発症に関わる新たな遺伝子領域を発見 —どの病型になりやすいかの予測も可能に—

Press Release

Genome-wide association study of clinically-defined gout identifies multiple risk loci and its association with clinical subtypes

Hirotaka Matsuo, Ken Yamamoto, Hirofumi Nakaoka, Akiyoshi Nakayama, Masayuki Sakiyama, Toshinori Chiba, Atsushi Takahashi, Takahiro Nakamura, Hiroshi Nakashima, Yuzo Takada, Inaho Danjoh, Seiko Shimizu, Junko Abe, Yusuke Kawamura, Sho Terashige, Hiraku Ogata, Seishiro Tatsukawa, Guang Yin, Rieko Okada, Emi Morita, Mariko Naito, Atsumi Tokumasu, Hiroyuki Onoue, Keiichi Iwaya, Toshimitsu Ito, Tappei Takada, Katsuhisa Inoue, Yukio Kato, Yukio Nakamura, Yutaka Sakurai, Hiroshi Suzuki, Yoshikatsu Kanai, Tatsuo Hosoya, Nobuyuki Hamajima, Ituro Inoue, Michiaki Kubo, Kimiyoshi Ichida, Hiroshi Ooyama, Toru Shimizu, and Nariyoshi Shinomiya
Annals of the Rheumatic Diseases, 2015 Feb 2. pii: annrheumdis-2014-206191. DOI: 10.1136/annrheumdis-2014-206191

プレスリリース資料

生活習慣病の一つである痛風は、激しい関節痛を引き起こすのみならず、高血圧、脳卒中などのリスクとなることが知られています。近年の遺伝子研究により、痛風の発症には遺伝的要因が関与していると考えられていましたが、その全容はまだ明らかとなっておりません。

この度、松尾洋孝(防衛医科大学校講師)、山本健(久留米大学教授)、中岡博史(国立遺伝学研究所特任研究員)、中山昌喜(防衛医科大学校医官)、崎山真幸(同)らの研究グループは、ヒトゲノム全体を調べるゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、新規のものも含め、痛風の発症に関わる5つの遺伝子領域を発見しました。今回の研究は、アンケート用紙などによる自己申告の痛風症例は対象とせず、医師により確実に診断された痛風症例のみを対象とした世界で初めてのGWAS です。このため、痛風の病型ごとの違いを見るような詳細な解析が可能であり、病型ごとに異なる遺伝子領域が関連していることも発見しました。

本研究は、近年増えつつある痛風患者の遺伝的リスクを評価する有用な手段となりうる成果です。この発見により、痛風を発症するリスクの高いヒトを早期に見つけ出し、さらにどの病型になりやすいかを予測でき、個人差に応じた治療薬の選択につながることが期待されます。痛風に対する新たな視点からの予防法や治療薬の選択に有用であり、医療費の削減につながることが多いに期待されます。

本研究は、文部科学省新学術領域研究「ゲノム支援」のサポートを受けて進められました。

Figure1

日本人男性の痛風患者におけるゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果
日本人の痛風患者945人と対照者1,213人についてのGWASの結果(一次解析)で、第1~22番染色体までの約70万か所の一塩基多型(横軸)における痛風との関連の強さ(縦軸)をグラフ化したもので、プロットが上に行くほど痛風との関連が強い一塩基多型であることを表しています。図に示す5か所の遺伝子領域で痛風との強い関連性を認め、別の集団でも関連性が再現(二次解析)されました。


リストに戻る
  • X
  • facebook
  • youtube