2014/05/23

高度な脳機能を担う『層構造』の起源に新しい光

脳機能研究部門・平田研究室

A common developmental plan for neocortical gene-expressing neurons in the pallium of the domestic chickenGallus gallus domesticus and the Chinese softshell turtle Pelodiscus sinensis.

I. K. Suzuki and T. Hirata Front. Neuroanat.(2014)  8 20 doi: 10.3389/fnana.2014.00020

哺乳類の際立った特徴は、大脳皮質の高度な発達です。後から生まれた神経細胞が上へ上へと重層されることで、みごとな層構造を作りあげます。この哺乳類固有の脳構造がどのように進化してきたのかは、古くから興味を持たれてきた大きな謎です。我々は、以前の研究で、層状の大脳皮質を持たないニワトリの脳にも、哺乳類大脳皮質の上層細胞と下層細胞に類似した神経細胞が存在することを報告しました。しかし、ニワトリと哺乳類の比較だけでは、進化の過程で起きた変化を予測できず、他の動物種の解析が待望されていました。今回、我々は、より原始期的な脳だといわれるカメの大脳皮質相同領域を用いて、遺伝子発現解析を行いました。カメの脳は一層の神経細胞層をもち、ニワトリの脳とは形態が大きく異なります。しかし、大脳皮質層マーカー遺伝子オーソログの発現を調べると、カメとニワトリの神経細胞の分布パターンは、極めて良く似ている事がわかりました。具体的には、いずれの動物においても、下層細胞は内側に、上層細胞は外側に分布しており、これが非ほ乳類羊膜類における基本型であると考えられました。この結果は、我々が提唱する「大脳皮質神経細胞の古い起源」を支持します。そして、その背後には、誕生時期依存的に神経細胞の個性を決める機構の普遍性があるだろうと考えています。

Figure1

羊膜類における脳進化のモデル


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