2014/05/16

骨リモデリングによるゼブラフィッシュ側線器官の形成メカニズム

初期発生研究部門・川上研究室

Development of the lateral line canal system through a bone remodeling process in zebrafish.

Hironori Wada, Miki Iwasaki, Koichi Kawakami Dev. Biol.,  in press, doi: 10.1016/j.ydbio.2014.05.004

動物の皮膚はさまざまな組織からなる複雑な構造をしています。皮膚の感覚器(神経組織)は、決まった位置に決まったパターンで存在することによって、適切な感覚受容を行っています。これらの感覚器は、どのように形成されるのでしょうか。

ゼブラフィッシュの側線器官(感丘)は、稚魚期には体表にありますが(図A)、魚の成長過程において、骨組織であるウロコの中に取り込まれます(管器、図C)。我々は、この移行過程において、骨形成と骨吸収(骨リモデリング)が行われていることを明らかにしました(図B)。さらに、ウロコの移植実験と突然変異体解析から、(1)側線器官が骨リモデリングに必要であること、また、(2)骨リモデリングは側線器官の成長に必要であること、を示しました。これらの結果は、感覚器(神経組織)と骨(結合組織)は、密接に相互作用しながら、形態形成を行っていることを示しています。

骨組織の恒常性の維持は、生体にとって重要な役割を持っています。骨形成と骨吸収のバランスが崩れることによって、骨粗鬆症などの骨疾患が生じます。魚のウロコは、体表近くに存在する骨組織であるため、その形成・吸収過程を生きたまま観察することができます。骨リモデリング過程における組織間の相互作用を明らかにすることが今後の課題です。

Figure1

(A)稚魚において、側線器官は体表に存在する。(B)魚の成長過程で、側線器官の周囲の骨が隆起する。同時に側線器官の下の骨が吸収される。(C)側線器官は、骨に取り囲まれ、皮膚(ウロコ)の下に埋没する。


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