2014/05/07

「消えた遺伝率」の謎に迫る研究成果を発表

マウス開発研究室・小出研究室

Segregation of a QTL cluster for home-cage activity using a new mapping method based on regression analysis of congenic mouse strains

Shogo Kato, Ayako Ishii, Akinori Nishi, Satoshi Kuriki, Tsuyoshi Koide Heredity. advance online publication 30 April 2014; doi:10.1038/hdy.2014.42

行動などのありふれた表現型にかかわる遺伝子座(QTL)の効果を示すためには、コンジェニックマウス系統と呼ばれる、QTLを含む染色体領域を他の系統の遺伝的背景に導入した系統を作製することが効果的です。しかし、このようにして特定の系統に導入されたQTL領域は、狭めるにしたがって効果が消えてしまったり効果が変化したりする現象がよくみられ、「消えた遺伝率」と呼ばれる遺伝学の大きな問題となっています。

 小出剛准教授らの研究室は、統計数理研究所の加藤昇吾助教および栗木哲教授との新領域融合プロジェクト研究で、QTLとしてマップされた領域に複数の独立のQTLが存在してクラスターを作っていることを明らかにしました。方法としては、多くの部分的に重なり合ったコンジェニック系統のホームケージ活動性の行動データについて、そのゲノムの重なり合った位置情報と行動データから、回帰モデルを用いて、どのゲノム領域がどのような効果を持っているか解明する方法を開発しました。その結果、全体として活動量を下げる効果を持っていたQTL領域は、実は4つのQTLからなるクラスターを構成し、低活動にするQTLが2か所、高活動にするQTLが1か所、その高活動の効果を打ち消す活性をもったQTLが1か所あることが分かりました。

この結果は、今後ありふれた行動などの表現型にかかわる遺伝子の分子メカニズムを正確に理解し、「消えた遺伝率」の謎に迫る上で重要な情報をもたらしてくれると期待できます。

この研究は情報・システム研究機構新領域融合プロジェクト(遺伝機能システム学)、科学研究費補助金(23650243, 25116527)、山田科学振興財団の支援を受けて行われました。

Figure1

コンジェニック系統のホームケージ活動性から回帰モデルで判明した4つのQTL.各コンジェニック系統はそれぞれ異なった領域を持っていますが、各系統が示すホームケージ活動性はそれぞれ持っている領域により異なります。このデータを用いて、ゲノム領域の情報とともに回帰モデルによりホームケージ活動性にかかわる遺伝子領域を詳細にマッピングしました。


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