2014/04/18

異なる方向に変化した遺伝子調節のしくみが、新たな種をもたらす!

Press Release

Evolutionarily Diverged Regulation of X-chromosomal Genes as a Primal Event in Mouse Reproductive Isolation

Ayako Oka, Toyoyuki Takada, Hironori Fujisawa, and Toshihiko Shiroishi PLoS Genet Accepted manuscript online,   2014, doi/10.1371/journal.pgen.1004301

プレスリリース資料

異なる生物集団の間では、交配しても子が生まれない、生まれても生存できない、交配自体を行わないといったことがありえます。たとえば、祖先が共通であっても「長い間、地理的に隔てられる」といった要因によって、子孫を残せなくなることが知られています。このような現象は「生殖隔離」とよばれ、動物や植物で広くみられます。

生殖隔離は、新たな種を作り出すためにきわめて重要です。生殖隔離がなければ、一度分離した集団でも再び交配することで遺伝子が混ざり合い、種として成り立たないことになってしまいます。古くより、生殖隔離がおきるメカニズムとして、「ドブジャンスキー・ミュラー (Dobzhansky-Muller) モデル」が提唱されてきました。このモデルでは「分離した集団において、互いに作用する複数の遺伝子が独立に進化した後に交配すると、生まれた子(雑種個体)で、遺伝子の働きに不適合が生じるため」と説明されており、実際に、X染色体上の遺伝子が不適合をおこしやすいことが知られています。

ただし、その具体的な分子メカニズムについては、ほとんどわかっていませんでした。今回、情報・システム研究機構新領域融合研究センターの岡彩子特任研究員、統計数理研究所の藤澤洋徳教授、国立遺伝学研究所の高田豊行助教、それに城石俊彦教授らの共同研究グループは、50〜100万年前に共通祖先から分かれた2亜種のマウスを対象にした実験を行うことで、謎だった分子メカニズムの解明に成功しました。共同研究グループは、生殖能力の低下が観察されるX染色体のみが別亜種から由来する雄のマウスの全ゲノムについて遺伝子の発現解析を行い、X染色体上の遺伝子に発現異常が生じていることを突き止めました。この発現異常が生殖隔離の原因であり、新しい種がうまれる分子メカニズムと考えられます。

Figure1

図:染色体コンソミック系統における遺伝子の発現異常。正常な精巣組織には環状の構造(精細管)の中に減数分裂を行っている生殖細胞がみられるが(写真左上)、X染色体コンソミック系統ではみられない(写真左下)。X染色体コンソミック系統では、MSM系統由来のX染色体上の遺伝子の20%で発現異常がみられる。


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