野生マウスはどのようにして愛玩化されたのか

マウス開発研究室・小出研究室

Selection for reluctance to avoid humans during the domestication of mice
Tatsuhiko Goto, Akira Tanave, Kazuo Moriwaki, Toshihiko Shiroishi, Tsuyoshi Koide
Genes Brain and Behavior 2013. DOI: 10.1111/gbb.12088

人類はこれまでに様々な動物種を選択により家畜化してきました。その家畜化の過程で野生原種から変化する行動が愛玩化と呼ばれる行動形質です。しかし、この愛玩化とはどのような行動の変化であるのか、これまであまり明確にされてきていませんでした。私たちは、米国の動物学者であるEdward O. Priceが、その著書の中で、「愛玩化とは動物個体が人を避ける傾向が弱くなるか、あるいは積極的に人に近づく傾向が強くなること」と述べていることに着目しました。そこで、この二つの性質を区別するための3種類の行動テストを考案し、野生由来の10系統と実験用の6系統および愛玩用の1系統について、この新規行動テストを行いました。その結果、愛玩および実験用マウスは「愛玩化」の過程で、ヒトからの接触を避けないような行動特性が選抜されてきたものの、人に積極的に接近する性質については選択されてこなかったことが示されました。この結果は、今後の研究において、野生マウスがどのような遺伝的変化によって愛玩化されるか解明するための糸口になるものと期待されます。

なお、筆頭著者の後藤達彦博士は情報・システム研究機構、新領域融合プロジェクト特任研究員として研究に従事しました。

図1. 国立遺伝学研究所には、森脇和郎名誉教授を中心に世界各地で捕獲して収集し、それらから樹立された10種類の野生由来系統が維持されています。これらはいまだに野生マウスに特徴的な臆病な行動形質を保っており、世界的にも有数の貴重な遺伝資源です。一方、研究に一般的に使われる実験用系統は愛玩化されたマウスの集団から樹立されてきました。このように、野生系統と実験用系統はその由来も行動も顕著に異なるのです。
図2. マウスの愛玩化を調べるために新たに考案したテームテスト
図3. 実験用系統と野生系統は能動的テームテストでは有意な差を示さないのに対し、受動的テームテストでは野生由来系統がより人の手からの逃避を示します。


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