2013/08/14

遺伝子内ヘテロクロマチンへの対処

育種遺伝研究部門・角谷研究室

Mechanism for full-length RNA processing of Arabidopsis genes containing intragenic heterochromatin.
Hidetoshi Saze, Junko Kitayama, Kazuya Takashima, Saori Miura, Yoshiko Harukawa, Tasuku Ito and Tetsuji Kakutani
Nature Communications, 4, Article number:2301 doi:10.1038/ncomms3301

動物や植物のゲノムにはトランスポゾンが多数存在します。これらの生物は、エピジェネティックな機構を用いてトランスポゾンを不活性なヘテロクロマチン状態にすることで、その増殖を抑制しています。 一方、トランスポゾンは活発に転写されている遺伝子の内部にも見つかりますが、遺伝子内のトランスポゾンの制御機構についてはほとんど理解されていませんでした。

他の多くの生物と同様に、モデル植物であるシロイヌナズナやイネのゲノムにはヘテロクロマチンを内包した遺伝子が数多く存在します。こうした遺伝子内ヘテロクロマチンは多くがトランスポゾンの挿入により形成されたものでした。今回、ヘテロクロマチンをもつ遺伝子を適切に転写するのに必要な新しい因子IBM2(Increase in Bonsai Methylation 2)を発見し、その働きを調べました(図)。この研究により、生物がトランスポゾンの抑制を保ちつつ適切な遺伝子発現を保障する仕組みを進化させてきたことが明らかになりました。これは生物の集団中の遺伝的多様性とその影響を理解する上で重要な知見になると考えます。(この研究はOIST佐瀬研究室との共同研究です。)

テロクロマチンをもつ遺伝子(AT3G05410.2)の転写がibm2変異体では阻害される。緑と赤が転写されたmRNAを、点線がスプライシングされている領域を示す。 遺伝子内にはトランスポゾン(ATLINE2)の挿入があり、H3K9メチル化を受けてヘテロクロマチン化されている(再下段)。


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