2013/08/08

細胞分裂のタイミングの調節による球菌から桿菌への復帰

原核生物遺伝研究室・仁木研究室

A mutation in the promoter region of zipA, a component of the divisome, suppresses the shape defect of RodZ-deficient cells
Daisuke Shiomi, Hironori Niki
MicrobiologyOpen (DOI: 10.1002/mbo3.116)

細菌ごとに形や大きさは決まっている。大腸菌や枯草菌は、長楕円の形、すなわち桿状をしており「桿菌」と呼ばれている。そして桿状の形態は、細胞壁により維持されている。細胞壁は抗生物質の標的であることから、細菌の形態維持の機構は盛んに研究されるようになった。私達の研究室では桿状形態を制御する因子であるRodZについて研究を行なってきた。RodZが欠損した大腸菌は、球状の形態に変化する。この球状に変化した大腸菌から、再び桿状に戻った復帰変異体を分離し調べることによって、桿状形態の制御の仕組みについて調べている。今回、復帰変異体の一つが細胞分裂の制御に関わるZipA蛋白質の発現変異により、球状から桿状に戻ることを明らかにした。ZipAは細胞分裂の際に、分裂面の形成時期を決める。ZipA蛋白質の発現が増加すると、分裂面の形成が遅れるのである。しかし、遅れている間も細胞の伸長はつづき、分裂が遅れた分だけ通常よりも長い細胞になるのである。このように細胞分裂の遅延により、球菌から桿菌への形態の復帰が起きたのである。自然界にはストレプトコッカスのような極性をもったレンサ球菌がいるが、今回の発見はこのタイプの球菌から桿菌は生じる仕組みとして適用できるものである。

大腸菌型は、細胞の中央領域の細胞壁が伸長する。また細胞極性は常に一定であるため、分裂した細胞は直鎖上に並ぶ。レンサ球菌型は半球の間の細胞壁がわずかに伸長するだけである。RodZ欠損株もこの型である。他方、ブドウ球菌型は細胞全体が膨らみ、また細胞極性も変わるため分裂した細胞は固まりとなる。大腸菌でもMreBやMrdAの欠損株がこの型となる。


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