体の様々な器官は幹細胞を持ち、細胞が新しく置き換わったり、受けた損傷を修復したりして器官を一定の大きさに保ちます。どのようにして、器官は一定のサイズを認識するのでしょうか。
ゼブラフィッシュの側線器官(感丘)は、中央の感覚細胞(有毛細胞)とそれを取り囲む支持細胞からなります(図A)。感丘は、出芽によって増え、クラスターを形成します。すべての感丘は、同じ大きさをしています。我々は、Wntシグナル活性が、増殖細胞で高いこと(図C)、一方、感覚細胞がWntシグナルの抑制因子Dkk2を発現することを見出しました(図D)。Wntシグナル、Dkkシグナル、それぞれの機能阻害・獲得実験から、Wntシグナルは細胞の増殖を促進し、DkkはWntシグナルを阻害することによって細胞増殖を抑えることがわかりました(図B)。つまり、Wnt/Dkkは負のフィードバック・ループを形成し、器官の大きさを一定に保っています。負のフィードバックは、多くの恒常的システムに必須のコンポーネントです。本研究は、器官サイズ調節における、負のフィードバックの分子機構を明らかにしました。
本研究は、科学技術振興機構さきがけの助成のもと行われました。
(A)ゼブラフィッシュ側線器官(感丘)模式図。
(B)Wnt/Dkkシグナルの作用機序。
(C)出芽細胞におけるWntシグナル活性(緑)が、有毛細胞(赤)の形成と共に失われる様子。
(D)有毛細胞ではWnt抑制因子Dkk2が発現する。