2013/07/09

半開放型の核分裂に必要な核膜動態制御

原核生物遺伝研究室・仁木研究室

Regulation of nuclear envelope dynamics via APC/C is necessary for the progression of semi-open mitosis in Schizosaccharomyces japonicus
Keita Aoki, Yuh Shiwa, Hiraku Takada, Hirofumi Yoshikawa and Hironori Niki
Genes to Cells 21 JUN 2013 DOI: 10.1111/gtc.12072. [Epub ahead of print]

真核細胞の分裂期は、核膜が崩壊し染色体が細胞内で露になる開放型の核分裂と、核膜が崩壊しない閉鎖型の核分裂の2つがあります。しかし真菌類ではその中間型も存在します。
カンジダ菌やジャポニカス分裂酵母では、核膜の一部分が消失する半開放型の核分裂が起きます。半開放型の核分裂は、開放型、閉鎖型両方の性質を備えているため、両者の特質を考える上でよい研究対象といえます。

私たちは、ジャポニカス分裂酵母を用いて、半開放型核分裂が起こるしくみについて研究を行っています。今回、半開放型核分裂には、脂肪酸合成因子が関わっていることを明らかにしました。
ジャポニカス分裂酵母の変異株ライブラリーから、半開放型核分裂が起こらない変異株を見つけました。その変異はE3ユビキチンリガーゼであるAPC/Cにありました。この変異株は増殖が高温で停止します。
この停止が手直しされ高温でも増殖できるようになったサプレッサー変異株とよばれるものを取り、調べました。サプレッサー変異は、脂肪酸合成因子Oar2に変異が起こっていました。
図のように、APC/C変異株では半開放型核分裂に異常がみられます。しかし、APC/C変異株にOar2の変異が加わったサプレッサー変異株では、その異常が部分的ですが修復されていました。
Oar2にはAPC/Cによって認識される配列がありました。また、Oar2のタンパク質の量がAPC/C変異株内では増量していました。
これらのことから、APC/CがOar2のタンパク質の量を制御すると思われます。脂肪酸合成因子Oar2は、核膜を作る脂質の合成に関係しています。

核膜の動態を、野生型、apc2変異株、apc2∆oar2変異株の中でそれぞれ観察した。野生型で見られた半開放型分裂は、apc2変異株で減退し、apc2∆oar2変異株では部分的に回復した。
緑:核膜マーカー(Cut11-GFP)、マゼンタ:染色体マーカー(H2A-mCherry)。スケールバー:5µm


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