2013/06/28

線虫胚の紡錘体における幅、長さと染色体量の定量的な関係性

細胞建築研究室・木村研究室

An allometric relationship between mitotic spindle width, spindle length, and ploidy in Caenorhabditis elegans embryos.
Yuki Hara, Akatsuki Kimura
Mol. Biol. Cell 24 (9), 1411-1419, 2013 doi:10.1091/mbc.E12-07-0528

遺伝情報を担う染色体を分配する装置である「紡錘体」は、「ひし形」を回転させたような美しい形をしています。大きい紡錘体でも小さい紡錘体でも似たような「ひし形」ができあがるので、ひし形の縦と横のサイズの比は細胞内で何らかの制御を受けていると予想されますが、そのような制御についてはわかっていませんでした。細胞建築研究室の原裕貴(総研大遺伝学専攻、現在はドイツEMBL研究員)と木村暁は線虫胚発生時に生じる様々なサイズの紡錘体を定量化しました。その結果、紡錘体の縦と横の長さが単純な比例関係(isometry)にはなく、「ひし形の横幅が、斜辺の約0.6乗に比例する」という、少し複雑だがきれいな関係性(allometry)があることを見いだしました。染色体の量を変えると、ひし形の横幅が染色体量の約0.4乗に比例することも見いだしました。これらの関係性から、原研究員らは紡錘体のひし形構造を制御する新たな力学的機構について提唱しました。

(A) 線虫胚における紡錘体の例(スケールバー=5 μm)。(B) 紡錘体の横幅(ピンク)、縦長の半分(青)と斜辺(オレンジ)の説明。(C) 通常(2倍体)の線虫(青)、1倍体の線虫(黄色)および多倍体の線虫(緑)について、紡錘体の横幅を染色体量(核相)の0.36乗と斜辺の0.58乗の積に対してプロットしたもの。(論文図を改変)


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