
「ヒトゲノム計画で15年かかって調べたものが、10日でできます。全然違うんです。パラダイムシフトですね。この機械が遺伝研に7台あります。」井ノ上先生の目標は、この次世代シークエンサーを使って難病患者の遺伝子を解析し、病気の原因となる遺伝子を見つけることだ。遺伝子が関与する難病は5000くらいあるという。そのほとんどは原因がわかっていない。「次世代シークエンサーが出てきて、今やるべきことはこれだと。難病が一気に片がつくと思っています。」病院と連携し、難病患者の家系が見つかれば、その家族の遺伝子を解析し、病気の原因遺伝子を探索する。病気の種類にはこだわらず進めていく。
井ノ上先生は医学部出身。大学時代、先生が言った「医学は学問ではない」という言葉がショックだった。「要するに患者さんが治ればいい。新しい検査法が生まれれば、古いものはなくなる。だから医学には不変の体系というものがない。」しかしアメリカのユタ大学で人類遺伝学に出会って「これだ!」と思った。「遺伝学なら、病気の原因がわかり、そのメカニズムがわかる。そこから治療法も開発できる。体系ができる。だから遺伝学をきちっとやらないといけないと強く思いました。」