細胞内微細構造の「硬さ」「弾性」「流動性」を測る

島本研究室・物理細胞生物学研究室


細胞内の微細構造には様々な力が加わっています。たとえば、細胞分裂の時には染色体を分配する紡錘体に大きな力がかかります。また、細胞が組織の中を移動するときには細胞や核をゆがませる力がかかります。

それらの力に対抗しながら適切に機能するために、紡錘体や核などの微細構造には適度な「硬さ」「弾性」「流動性」が必要だと考えらます。

これまで、細胞内の微細構造の「形作り」の制御は様々な観点から詳細に調べられてきましたが、微細構造の「硬さ」「弾性」「流動性」すなわち物理的な性質についてはほとんど調べられていませんでした。

物理細胞生物学研究室の島本勇太准教授らの研究グループは、太さが髪の毛の百分の一ほど( 〜1μm)の細いガラスを使って細胞内の微細構造を直接触って、力を測りながら微細構造の「ゆがみ」を観察する方法を開発しました。

微細構造に生じる力とゆがみの関係を定量的に解析することにより、微細構造の物理的な性質を調べることが可能になったのです。

本技術により可能になった細胞内の微細構造の物理的な性質を調べるアプローチと、細胞生物学的、分子生物学的アプローチを駆使することにより、力を中心とした生命現象の制御メカニズムがあきらかになることが期待されます。


本技術は以下の研究成果の基盤のひとつになっています
DNAは細胞のバネとしても働いている~「DNAの新たな役割」を提唱~
染色体分配装置の硬さと柔らかさ


図1:ガラスファイバー計測システム
(A)システムの外観写真。顕微鏡の試料チャンバー内に置かれたサンプルを、マイクロマニピュレーターとガラス製マイクロファイバーを使って力計測・変形操作することができる。
(B)ファイバー先端の像。直径〜1ミクロン、⻑さ~100ミクロンのしなやかな構造で、作用する⼒の⼤きさに⽐例して屈曲変位する。
(C)紡錘体の力計測実験模式図。紡錘体の着目する部位にファイバー先端を挿入し、変形操作用ファイバーで与えたひずみと力計測用ファイバーで測った力から構造の硬さや弾性・流動性を決定できる。


図2:同様の計測系を細胞核など他の細胞内構造にも応⽤できる。
左から、実験の模式図、明視野顕微鏡写真、計測から得られた核の粘弾性モデル。

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