プレスリリース
Increased intracellular H2S levels enhances iron uptake in Escherichia coli
Shouta Nonoyama, Shintaro Maeno, Yasuhiro Gotoh, Ryota Sugimoto, Kan Tanaka, Tetsuya Hayashi and Shinji Masuda
mBio (2024), e0199124 DOI:10.1128/mbio.01991-24
東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の野々山翔太助教、増田真二教授のグループは、同 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の田中寛教授、国立遺伝学研究所の後藤恭宏准教授(当時 九州大学大学院医学研究院助教)、林哲也教授らと共同で、細菌の硫化水素(H2S)合成能が鉄(Fe)の取り込み活性の調節に重要であること、ならびにその制御を欠損すると抗生物質耐性が低下することを見出した。
多くの腸内細菌は硫化水素合成能を持ち、その機能を強化すると細胞内での硫化鉄(FeS)の形成が促され、その結果抗生物質耐性が高まることが分かっていた。しかしそのメカニズムは不明であった。
今回の研究では、過剰な硫化水素合成能を持つ変異体の大腸菌を作出し、その株の遺伝子発現(用語1)を解析したところ、細胞への鉄の取り込みに関与する遺伝子の発現が上昇していることが分かった。さらにその遺伝子発現の上昇には、硫化水素センサータンパク質「YgaV」の働きが必要であることを発見した。また、YgaVの機能を欠損させると、鉄取り込み活性が著しく阻害されることを明らかにした。この発見により、薬剤耐性を生じさせない新たな抗生物質の開発につながるものと期待される。
本研究は、科学研究費助成事業の学術変革A(21H05271)、先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム科学研究費助成事業の学術変革A(22H04925)の支援を受けて実施された。
研究成果は9月26日(現地時間)に「mBio」オンライン版に掲載された。