2024/08/07

イネコムギはイネのミトコンドリアを持つ新たなコムギであった!
~世界初!コムギにイネの遺伝子資源の導入に成功~

Wheat cybrid plants, OryzaWheat, regenerated from wheat-rice hybrid zygotes via in vitro fertilization system possess wheat–rice hybrid mitochondria

Tety Maryenti, Shizuka Koshimizu, Nonoka Onda, Takayoshi Ishii, Kentaro Yano, Takashi Okamoto

Plant and Cell Physiology (2024), pcae074 DOI:10.1093/pcp/pcae074

プレスリリース資料

コムギとイネは世界の主要作物ですが、異なる亜科に属していることから交雑することができず(交雑不全1)、それらが持つ優良遺伝資源を相互に利用することはできませんでした。

東京都立大学大学院理学研究科のTety Maryenti(当時・大学院生、現・インドネシア大 助教)、恩田乃々佳(大学院生)、岡本龍史 教授、鳥取大学国際乾燥地研究教育機構・乾燥地研究センターの石井孝佳 准教授、国立遺伝学研究所の越水静 助教らは、先行研究により作出されたコムギとイネの交雑植物(イネコムギ)(2021年10月発表)のゲノム解析を行い、イネコムギがイネのミトコンドリアをもつ細胞質雑種コムギであることを明らかにしました。

今回の研究では、図Aのように、コムギおよびイネの花から単離した配偶子(卵細胞と精細胞)を任意の組み合わせで顕微授精法2により融合させることで、イネとコムギの交雑植物(イネコムギ,oryzaWheat)を作出し、それらのゲノムの配列と組成を決定しました。その結果、イネコムギは、コムギゲノムに加えて、イネとコムギのミトコンドリアゲノムを持つ細胞質雑種3コムギ(Cybridコムギ)であることが示されました。(図B)。また、ゲノム解析を行った1個体では、イネの核ゲノムがコムギの核ゲノムの中に一部残ったイネコムギも確認することができました。しかし、このイネコムギがキメラ4であったため、次世代へのイネゲノムの伝達は確認できませんでした。これらの結果は、コムギにイネの遺伝子資源を導入できたことを世界で初めて示したものであり、顕微授精法による交雑植物(イネコムギなど)の作出手法は新たな育種技術としても期待されます。

図: 顕微授精法によるイネーコムギ雑種植物(イネコムギ)の作出(A)とイネコムギのゲノム構成(B)
(A)コムギ精細胞、イネ卵細胞、コムギ卵細胞の組み合わせで作出した交雑受精卵(異質倍数性)は、交雑不全を示すことなく植物体にまで発生する。
(B)イネコムギ細胞の核ゲノムおよびミトコンドリアゲノムの構成


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