2023/09/19

花の構造色の発色に関与する因子の絞り込みに成功

有田研究室・生命ネットワーク研究室

Genome and transcriptome analyses reveal genes involved in the formation of fine ridges on petal epidermal cells in Hibiscus trionum

Shizuka Koshimizu*, Sachiko Masuda, Arisa Shibata, Takayoshi Ishii, Ken Shirasu, Atsushi Hoshino, Masanori Arita 
* 責任著者

DNA Research 2023 Sep 11 DOI:10.1093/dnares/dsad019

構造色とは物質表面の微細な構造により発色する色を言い、昆虫や鳥類など様々な生物で観察されています。構造色は植物の花弁にも見られ、昆虫の誘引に寄与すると言われています(Moyroud et al., 2017)。

ギンセンカ(Hibiscus trionum)は、花弁に構造色を持つ植物の1つです。ギンセンカの花は、中心部が紫色、外側が薄い黄色を示します。紫色はアントシアニンの色素由来ですが、紫色を示す花弁の表皮細胞には微細な凹凸構造が存在するため、構造色も発色しています。写真では分かりづらいですが、角度を変えると色が変化して見えます。

本研究では、ギンセンカのゲノム解析やトランスクリプトーム解析を行い、構造色の発色に必要な微細構造の形成に関わる因子の絞り込みに成功しました。

絞り込んだ主な因子
SHINE1:植物のクチクラ形成に関わる転写因子。
CUTIN SYNTHASE 2:クチクラ成分の1つであるクチンの合成因子。
・CYP77Aファミリー遺伝子:同じくクチンの合成に関わる因子。

これらの因子は、モデル植物シロイヌナズナの花弁に存在する微細構造の形成に関わることが知られているため、ギンセンカ花弁の微細構造形成にも関与する可能性が高いと考えられます。

今後、絞り込んだ候補因子を皮切りに微細構造形成のメカニズムやその進化の解明を目指します。

本研究は、国立遺伝学研究所(越水静助教、有田正規教授)、理化学研究所(増田幸子研究員、柴田ありさテクニカルスタッフ、白須賢グループディレクター)、鳥取大学乾燥地研究センター(石井孝佳准教授)、基礎生物学研究所(星野敦助教)による共同研究グループによって実施されました。

また本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 ACT-X(JPMJAX21B6)、日本学術振興会(JSPS) 科研費(20H05909)、サッポロ生物科学振興財団、基礎生物学研究所・共同利用研究(20-341、21-223、22NIBB308、23NIBB314)の支援を受けて実施されました。

図:ギンセンカの花弁と表面構造の比較


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