2023/08/21

DNA複製開始に必須なタンパク質の発見

鐘巻研究室・分子細胞工学研究室

In silico protein interaction screening uncovers DONSON’s role in replication initiation

Yang Lim, Lukas Tamayo-Orrego, Ernst Schmid, Zygimante Tarnauskaite, Olga V. Kochenova, Rhian Gruar, Sachiko Muramatsu, Luke Lynch, Aitana Verdu Schlie, Paula L. Carroll, Gheorghe Chistol, Martin A. M. Reijns, Masato T. Kanemaki, Andrew P. Jackson, and Johannes C. Walter

Science 2023 Aug 17 DOI:10.1126/science.adi3448

細胞が増殖するには、遺伝情報をコードする染色体DNAを複製する必要があります。これまで、真核生物のDNA複製研究は出芽酵母をモデルとして解析が進んでいました。出芽酵母においては、複製開始反応に必要なタンパク質は全て同定されており、それらを使って再構成複製実験も行われています。この反応において、CDC45, MCM2-7, GINSから構成されるCMG複製ヘリカーゼを組み立てることが重要な制御ポイントになっており、遺伝研の荒木弘之名誉教授が発見したSld2がGINS, Polε, Dpb11と前ローディング複合体(pre-LC)を作り、GINSをMCM2-7に呼び込むことを明らかにしています。

一方、脊椎動物においてもCMG複製ヘリカーゼ形成が重要であるにも関わらず、その形成反応の全容が明らかになっていません。本論文では、小頭症を引き起こす原因遺伝子がコードするDONSONが、GINS, Polε, TOPBP1 (Dpb11のホモログ)とpre-LCを作り、CMG複製ヘリカーゼを構成するのに寄与していることを見出しました。本研究ではAlfafold2 multimerを駆使したAIによるタンパク質結合予測を駆使し、カエル卵抽出液、ヒト培養細胞、マウス個体を用いてDONSONの機能を解析しました。

坂本(村松)佐知子技官と鐘巻将人教授がAID2法を利用して、DONSONを分解除去できるヒト細胞を作成しました。本研究は、英エジンバラ大学のAndrew Jackson教授と米ハーバード大学Johannes Walter教授との国際共同研究としておこなわれました。

図:複製開始反応におけるCMGヘリカーゼを構成に至るまでのモデル図。


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