2023/05/11

六量体複製ヘリカーゼMCM2–7を効率よく組み立てる意義とは?
―複製ライセンシングチェックポイントを説明する新仮説―

The assembly of the MCM2–7 hetero-hexamer and its significance in DNA replication.

Yuki Hatoyama and Masato T. Kanemaki.

Biochemical Society Transactions 2023 May 5 DOI:https://doi.org/10.1042/BST20221465

細胞が増殖をするには、遺伝情報をコードする染色体DNAを複製しなければなりません。染色体DNAを複製する際には、その二重らせんを引き離して一本鎖にする複製ヘリカーゼであるMCM2–7が必要不可欠です。この複製ヘリカーゼMCM2–7はリング状の六量体を形成しています。

英国生化学会が出版する総説雑誌Biochemical Society Transactionsに掲載された本総説では、MCM2–7六量体がどのようなメカニズムにより細胞内で効率よく組み立てられるのか、またその生理学的意義について、我々の論文報告をもとに議論しました。本総説ではMCMBPがシャペロンとして作用することで、六量体MCM2–7の組み立てを促進しており、その結果DNA複製前にMCM2–7が十分量DNA上へ供給されることで、細胞のゲノム完全性につながっているというモデルを提唱しています(図)。

染色体に結合したMCM2–7が不足していると、細胞はそれを感知して細胞周期をG1期に停止させる複製ライセンシングチェックポイントの存在が提唱されています。本総説で細胞はMCM2–7の不足を直接感知しているのではなく、MCM2–7の発現量が低下した細胞ではDNA複製過程でDNA障害が生じており、次のG1期においてそのDNA障害を検知しているのではないかという新仮説を提唱しました。

Figure1

図:MCM2–7複合体の細胞内組み立て機序のモデル図。MCMBPはMCM3と結合しその安定性を保ち、さらにMCM2,4,6,7複合体への組み込みを助けることで、安定的な6量体であるMCM2–7を効率よく組み立てる。


リストに戻る
  • X
  • facebook
  • youtube