2022/12/05

赤シソの高精度なゲノム配列情報を決定
〜デジタル育種に向けた基盤情報を取得〜

A highly contiguous genome assembly of red perilla (Perilla frutescens) domesticated in Japan

Keita Tamura, Mika Sakamoto, Yasuhiro Tanizawa, Takako Mochizuki, Shuji Matsushita, Yoshihiro Kato, Takeshi Ishikawa, Keisuke Okuhara, Yasukazu Nakamura, Hidemasa Bono

DNA Research 2022 Nov 16 DOI:10.1093/dnares/dsac044

プレスリリース資料

広島大学大学院統合生命科学研究科の田村啓太研究員、坊農秀雅特任教授、国立遺伝学研究所の坂本美佳特任研究員、谷澤靖洋助教、望月孝子特任研究員、中村保一教授、広島県立総合技術研究所農業技術センターの松下修司主任研究員、三島食品株式会社、プラチナバイオ株式会社からなる研究グループは、最新のDNA配列解析技術を用いて、国内で栽培されてきた赤シソの高精度なゲノム配列情報を決定しました。

生物の基本的な設計図ともいえるゲノム配列情報は、生物の仕組みを明らかにする基礎研究のみならず、より優れた特性をもつ作物などを作り出す品種改良(育種)技術など、産業利用においても重要な基盤となるものです。

研究グループは、三島食品株式会社が育種を進めてきた赤シソ品種「豊香3号」からゲノムDNAを抽出し、これまでドレードオフの関係にあった配列の「長さ」と「精度」の両立を実現した最新のDNA配列解析技術を用いて、赤シソゲノムの配列断片を取得しました。この配列断片を、ソフトウェアを使って連続した領域を連結し、20本の染色体に対応する巨大な配列にまとめました。この巨大配列は、ギャップと呼ばれる未決定領域が1本あたり4か所以内と極めて少なく、うち7本はギャップのない完全な配列として得られました。

本研究により、赤シソについてゲノム情報を利用した「データ駆動型ゲノム育種(デジタル育種)」を実施するための基盤情報が得られたことから、今後赤シソのさらなる高機能化や栽培特性の改良に向けた研究開発の加速が期待されます。

本研究は、広島県ものづくり価値創出支援補助金、科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)「Bio-Digital Transformation(バイオDX)産学共創拠点」(JPMJPF2010)、および日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業挑戦的研究(萌芽)(21K19118)によって実施されました。

本研究成果は、2022年11月16日にDNA Research誌に掲載されました。

遺伝研の貢献
大量遺伝情報研究室が有するこれまでの植物ゲノム解析の経験を活かして、塩基配列のアセンブルと遺伝子アノテーションを広島大学と共同で実施し、ゲノムデータベースの構築を行っています(近日公開予定)。ゲノム解析には遺伝研スーパーコンピュータを活用しました。

Figure1
図: 赤シソ品種「豊香3号」(写真提供:三島食品株式会社)

リストに戻る
  • X
  • facebook
  • youtube