ミドリイガイのゲノム解析からわかった足糸の耐久性の秘密

Press Release



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Genomics and transcriptomics of the green mussel explain the durability of its byssus

Koji Inoue*, Yuki Yoshioka, Hiroyuki Tanaka, Azusa Kinjo, Mieko Sassa, Ikuo Ueda, Chuya Shinzato, Atsushi Toyoda, Takehiko Itoh

Scientific Reports 11, 5992 (2021) DOI:10.1038/s41598-021-84948-6

プレスリリース資料

東京大学大気海洋研究所の井上広滋教授らは、ミドリイガイ(写真)の全ゲノム配列の解読を行い、高精度なゲノム情報の再構築に成功しました。ミドリイガイはムール貝の仲間で、熱帯・亜熱帯沿岸生態系の主要種であり、また、東南アジアで広く養殖される水産重要種です。さらに、本種には海水中のマイクロプラスチック粒子や汚染物質を蓄積する性質があり、海洋汚染の指標生物としても注目されています。今回解明した全ゲノム配列は極めて精度が高く、生理学、生態学、水産食品学など様々な研究分野に今後大きく貢献することが期待されます。

さらに、井上教授らは、解明したゲノム配列から、ミドリイガイが海中基盤に付着するために合成する「足糸」の耐久性のしくみを解明しました。ムール貝類の足糸は、微生物や酵素による分解に耐性があることが知られていましたが、そのしくみはこれまでわかっていませんでした。今回解明したゲノム上の遺伝子の中から、足糸を合成する「足」で主に発現し、かつ発現量が高い81遺伝子について詳しく調べると、タンパク質分解酵素阻害物質や生体防御関連の遺伝子がその約30%を占めていました。すなわち、足糸の耐久性は、頑丈な構造を作るだけでなく、分解から防御するための遺伝子を多数動員して実現していることが初めて明らかになったのです。この成果は、海中施設や船舶への貝類の付着防除対策に新たな手掛かりをもたらすものです。

本研究は、科学研究費助成事業新学術領域研究「学術研究支援基盤形成」先進ゲノム解析研究推進プラットフォーム(16H06279 (PAGS))、基盤研究(B)(18H02261)、東京大学—日本財団「FSI海洋ごみ対策プロジェクト」の支援を受けて実施したものです。

本研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」に2021年3月16日午後7時(日本時間)に掲載されました。

遺伝研の貢献
illumina社のHiSeq2500システムを用いて、熱帯・亜熱帯性のムール貝の一種ミドリイガイのゲノム情報を整備しました。本解析は、2018年度先進ゲノム支援の支援課題としておこなわれたものです。

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図: イガイ類が足糸の耐久性を高めるしくみ


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