魚類と羊膜類における視覚系から終脳への中継核の収斂進化

Non-thalamic origin of zebrafish sensory nuclei implies convergent evolution of visual pathways in amniotes and teleosts

Solal Bloch, Hanako Hagio, Manon Thomas, Aure´ lie Heuze´, Jean-Michel Hermel, Elodie Lasserre, Ingrid Colin, Kimiko Saka, Pierre Affaticati, Arnim Jenett, Koichi Kawakami, Naoyuki Yamamoto, Kei Yamamoto

Elife 9, e54945 (2020) DOI:10.7554/eLife.54945

哺乳類の視覚情報を皮質に伝える視蓋徘徊性経路(視蓋から視床を経由して皮質へ投射する経路)に類似した上行性の投射は、脊椎動物種にひろく見られますが、それらの経路の相同性、発生学的起源についてはよくわかっていませんでした。その進化について、より深い洞察を得るために、我々はゼブラフィッシュの視床類似構造、糸球体前核群(PG)の発生学的起源を解析しました。羊膜類の視床核と同様に、PGの外側核は視蓋の情報を受け取り終脳に投射します。トランスジェニックゼブラフィッシュを用いた細胞系譜解析により、PGの細胞の大部分が羊膜類の視床とは異なり中脳に由来することが明らかになりました。このことは、真骨魚類のPGは、前脳由来の細胞で形成される羊膜類の視床と相同ではないことを示唆しています。魚類の機能的に視床皮質経路に類似した投射は、非前脳細胞集団から形成されていたということは、脊椎動物の感覚系の収斂進化の驚くべき多様性を示しています。

1. 背景
脊椎動物の脳は発生学的に3つの主要な区分から成っています。すなわち、前脳、中脳、および後脳です。脳機能を決定するニューロンの接続は、後の発生段階で確立されます。機能的な接続は、異なる脊椎動物グループ間で保存されています。接続パターンは脊椎動物間で類似していることが多いため、それらの発生学的起源が同じか否かはよくわかっていませんでした。

2. 結果
ゼブラフィッシュの視覚情報を視蓋から終脳(外套、哺乳動物の皮質に相当する)へ投射する中継核―糸球体前核群(PG)―を特異的にラベルする遺伝子トラップ系統を作製し解析しました。Cre-loxPシステムを用いた細胞系譜の解析等を行い、ゼブラフィッシュのPGは中脳由来であることをつきとめました。これは、羊膜類(哺乳類と鳥を含むグループ)脳の感覚情報を外套(皮質)に投射する視床核―皮質経路が前脳内の経路であるのとは異なります。このように、脊椎動物脳のニューロンの接合パターンは、類似した機能を維持しているが発生学的起源を異にしており、収斂進化により形成されたと考えられます。

3. 今後の期待
魚類脳と羊膜類や哺乳動物脳の構造と機能を解析することにより、私たちはどのようにして複雑な脳を獲得してきたのか?について理解と洞察を得ることができます。 本研究は、パリ=サクレ大学・フランス国立科学研究センター(CNRS) 山本渓博士、名古屋大学大学院生命農学研究科山本直之博士との共同研究として行われました。本研究は部分的に、NBRP、NBRP基盤技術整備プログラムおよびNIG-JOINT (2013-A15)に支援されました。

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図1:さまざまな脊椎動物種における視蓋徘徊経路


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図2:遺伝子トラップゼブラフィッシュ系統においてGFP発現でラベルされた糸球体前核群(PG)細胞および終脳への投射。緑色(A, B)、オレンジ色(C,D)。


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