ゼブラフィッシュは、“うで”を再生することができる

Zebrafish can regenerate endoskeleton in larval pectoral fin but the regenerative ability declines

Keigo Yoshida, Koichi Kawakami, Gembu Abe, Koji Tamura

Developmental Biology 463, 110-123 (2020). DOI:10.1016/j.ydbio.2020.04.010

1.背景
再生は体の傷んだ部分が元の状態に回復する現象です。再生は脊椎動物でも確認されていますが種によって能力が異なります。哺乳類は肝臓や指先など体のごく一部しか再生できませんが、両生類には、手足、顎、脳、脊髄、心臓、水晶体、網膜、肝臓などに非常に高い再生能力を持っているものがいます。魚類であるゼブラフィッシュも高い再生能力をもち、脳、脊髄、心臓、網膜、肝臓、あご、ひれが再生します。けれども、ひれで再生できる構造は、鰭条(fin ray)を含む外骨格で、内骨格は再生できないとされてきました。

2.結果
本研究で私たちは、ゼブラフィッシュの稚魚期(21日齢)の発生中の胸びれ(前肢に相当)において内骨格が再生することを初めて示しました。胸びれの発生過程では、分化した軟骨細胞が板状に凝集した軟骨板(endochondral disc)が形成され、これがひれの付け根の内骨格要素である近位担鰭骨(きんいたんきこつ)の原基となります。この軟骨板の半分を切除すると、切除した部分は再生し、もとの内骨格パターンと同等のパターンを形成しました。再生の初期過程を観察したところ、ひれの初期発生で内骨格原基の成長に重要な上皮構造である外胚葉性頂堤(AER)の分子マーカーが切除後の切断面を速やかに覆う上皮で発現していること、切断面の間充織細胞が活発に増殖を始めることが分かりました。軟骨板の再生は、付加再生である四肢の再生過程と同様に、鰭の発生過程をなぞっていると考えられます。発生が進むにつれて胸鰭の内骨格の再生能力は低下し、成体のゼブラフィッシュでは再生能力は失われて、骨格は再生せず切除後に残された内骨格がただ肥大するだけになります。

3.今後の期待
内骨格の再生過程をゼブラフィッシュの特長である遺伝学的解析またはイメージング手法を用いて分子および細胞レベルで解明することが期待できます。このように発生過程で異なる再生能力をもつゼブラフィッシュの胸鰭内骨格の再生は、哺乳類の四肢再生能力の獲得にむけての新しいモデルとなるシステムと考えられます。

本研究は、東北大学大学院生命科学研究科田村宏治教授の研究室との共同研究として行われました。NBRP、NBRP基盤技術整備プログラム、NBRPゲノム情報等整備プログラムに支援されました。

Figure1

図:prdm16遺伝子のトラップ系統では、発生(development)過程において胸びれの内骨格部分の間充織細胞がラベルされ、GFP(緑)を発現している。この系統においては、軟骨板の再生過程(endochondrial disc regeneration)においても、内骨格部分の間充織細胞にGFPが発現した。図中の赤は、sox10遺伝子の発現を示し、軟骨細胞がラベルされている。


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