2020/03/12

消化管の逆蠕動運動を制御する神経細胞を発見

Gastrointestinal Neurons Expressing HCN4 Regulate Retrograde Peristalsis

Kensuke Fujii, Koichi Nakajo, Yoshihiro Egashira, Yasuhiro Yamamoto, Kazuya Kitada, Kohei Taniguchi, Masaru Kawai, Hideki Tomiyama, Koichi Kawakami, Kazuhisa Uchiyama, and Fumihito Ono


Cell Reports 30(9), 2879-2888 (2020). DOI:10.1016/j.celrep.2020.02.024

消化管は脳から独立した高次の神経ネット-ワーク(腸管神経系)をもっています。腸管神経系は消化管の正常な機能に不可欠です。蠕動(消化管の運動)もその機能の一つです。これまで正蠕動(口から肛門方向)については研究されてきましたが、逆蠕動についてはよくわかっていませんでした。

私たちは、遺伝子トラップトランスジェニックゼブラフィッシュを用いて、心臓のペースメーカー細胞で発現している過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネルHCN4が、消化管でも発現していることを見出し、HCN発現神経細胞がセロトニン作動性であることを同定しました。次に、HCN4発現神経細胞にチャネルロドプシンを発現させ、その機能を光で操作し生体内での役割を解析しました。その結果、消化管におけるHCN4発現神経細胞の興奮が、逆蠕動の収縮回数を増加させ、特に短軸方向への平滑筋(輪走筋)の収縮を増強させることを発見しました。

逆蠕動は、ヒトにおいて正常な状態の回腸や上行結腸で見られるほか、嘔吐にも関わっていると考えられますが、そのメカニズムはよくわかっていません。本研究は、逆蠕動のメカニズム解明の端緒になると考えられます。

本研究は、大阪医科大学藤井博士、小野博士らとの共同研究として行われました。NBRPおよびNBRPゲノム情報等整備プログラムの支援を受けています。

Figure1

図1:過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネルHCN4発現神経細胞を阻害すると逆蠕動が弱くなり、興奮させると逆蠕動が増強された。

Figure1

図2:ゼブラフィッシュ消化管における神経細胞(赤)およびHCN4発現神経細胞(緑)の視覚化。


リストに戻る
  • X
  • facebook
  • youtube