2019/03/25

細胞内のダイナミックなクロマチン構造

Dynamic chromatin organization without the 30-nm fiber

Kazuhiro Maeshima, Satoru Ide and Michael Babokhov

Current Opinion in Cell Biology Volume 58, June 2019, Pages 95-104 DOI:10.1016/j.ceb.2019.02.003

真核生物のクロマチンはゲノムDNA、ヒストンや他のタンパク質からなる負に帯電した長いポリマーです。細胞内のクロマチンはどのような構造なのでしょうか? この10年多くの報告から、クロマチンは従来考えられてきたような、いわば結晶のような規則正しく折りたたまれた階層構造ではなく,ダイナミックで、不規則かつ流動的な構造であることがわかってきました。高等真核生物において、クロマチンは多数の塊(ドメイン)を作り、それを基本単位としてダイナミックに構造を変換しながら機能していると思われます。タンパク質のDNAへのアクセシビリティーを変化させることにより、クロマチンのダイナミックスは遺伝子の発現、 DNA複製、修復・組換えを含むさまざまなゲノム機能を支配しています。この総説論文ではゲノミックスとイメージングの最近の知見に基づき、生きた細胞におけるクロマチンの構造とダイナミクスとその生物学的役割を論じました。

本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) (JPMJCR15G2)、日本学術振興会(JSPS) 科研費(16H04746)、武田科学振興財団の支援を受けました。

Figure1

図:ヌクレオソーム線維(10-nm線維)がとても不規則な形で折り畳まれ、コンパクトなドメイン(TAD)を形成している。ドメインは大きく束ねるコヒーシンとヌクレオソーム同士の局所的な結合によって束ねられている。クロマチンのダイナミックスな構造は、規則性を持つ大きな構造に比べて、物理的な束縛が少なく、より動きやすい。ドメイン同士は転写装置によって緩く繋がれていると思われる。核膜NEに面した領域はLAD (lamina-associated domain)と呼ばれている。NPC, 核膜孔。


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