2018/09/21

テントウムシの多様な斑紋を決定する遺伝子の特定に成功

Press Release

Repeated inversions within a pannier intron drive diversification of intraspecific colour patterns of ladybird beetles

Toshiya Ando, Takeshi Matsuda, Kumiko Goto, Kimiko Hara, Akinori Ito, Junya Hirata, Joichiro Yatomi, Rei Kajitani, Miki Okuno, Katsushi Yamaguchi, Masaaki Kobayashi, Tomoyuki Takano, Yohei Minakuchi, Masahide Seki, Yutaka Suzuki, Kentaro Yano, Takehiko Itoh, Shuji Shigenobu, Atsushi Toyoda, and Teruyuki Niimi

Nature Communications 9, Article number: 3843 (2018) DOI:10.1038/s41467-018-06116-1

プレスリリース資料

基礎生物学研究所 進化発生研究部門の安藤俊哉助教と新美輝幸教授らの共同研究チームは、テントウムシの多様な翅の斑紋(模様)を決定する遺伝子の特定に成功しました。

ナミテントウの前翅には、同種でありながら200以上もの異なる斑紋が存在します。この斑紋の多様性は、遺伝の様式から、一つの遺伝子によってもたらされることが古くから知られていましたが、具体的な遺伝子の実体および斑紋形成メカニズムは全く不明でした。本共同研究チームは、ナミテントウのゲノム解読などを行い、斑紋のパターンを決定する遺伝子がパニア(pannier)と呼ばれる遺伝子であることを特定しました。テントウムシの斑紋は、主に黒色と赤色のパターンとして作られますが、この遺伝子は、前翅がつくられる過程の、蛹の中期のステージにおいて黒色色素形成領域で働き、黒色色素(メラニン)の合成を促すと同時に赤色色素(カロテノイド)の沈着を抑制する機能をもつことが明らかになりました。興味深いことに、たった1つの遺伝子の働きにより翅全体の斑紋パターンが決定される機能は、ナナホシテントウにおいても保存されていることが判明しました。

本研究は基礎生物学研究所 進化発生研究部門の安藤俊哉助教と新美輝幸教授らのグループを中心として、東京工業大学の伊藤武彦教授らのグループ、基礎生物学研究所の重信秀治特任准教授らのグループ、明治大学の矢野健太郎教授らのグループ、国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授らのグループ、東京大学の鈴木穣教授らのグループからなる共同研究チームにより実施されました。

本研究成果はNature Communicationsに2018年9月21日に掲載されました。

本研究は、科学技術振興機構(さきがけ研究21「認識と形成」)、科学研究費助成事業 (18017012, 20017014, 新学術領域研究「ゲノム支援」221S0002 , 22380035,26113708, 17H05848, 18H04828)および基礎生物学研究所 共同利用研究(18-433)などの支援を受けて行われました。

遺伝研の貢献
国立遺伝学研究所は、ナミテントウのゲノム解読にあたり、塩基配列決定および決定した配列からゲノム配列の再構築を担当しました。

Figure1

図:ナミテントウの多様な翅の斑紋


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