魚の鱗が同じ方向に伸びる仕組み:shhシグナリングの乱れで鱗は「渦」を巻く

Epidermal regulation of bone morphogenesis through the development and regeneration of osteoblasts in the zebrafish scale.

Iwasaki M., Kuroda J., Kawakami K., Wada H.

Developmental Biology 437, 105-119, 2018. DOI:10.1016/j.ydbio.2018.03.005

魚の鱗は、透明な表皮の下に埋もれた平たい骨(皮骨)でできています。すべての鱗は同じ方向に伸び、体表を覆っています(図A)。本研究では、ゼブラフィッシュを用いて、骨を作る細胞(骨芽細胞)が、どのように鱗のパターンを生み出すのか調べました。まず、はじめに、初期発生研究部門で作成したゼブラフィッシュ・エンハンサートラップ系統をスクリーニングして、鱗で蛍光タンパク質を発現する系統を複数得ました(図A)。これらの系統の解析から、鱗には2種類の骨芽細胞があることがわかりました。(i)鱗の裏面に存在する1層の扁平な骨芽細胞と、(ii)鱗の成長端を縁取る骨芽細胞です(図A)。鱗の骨の成長様式は他の骨とは大きく異なり、骨芽細胞は増殖せず、細胞が仮足を伸ばしながら大きくなっていました。さらに、鱗の成長端にある骨芽細胞の分化と鱗の成長には、表皮細胞から分泌されるshh遺伝子が必要であることを示しました。Wnt/PCPシグナル遺伝子の阻害によってshh遺伝子の発現パターンを乱すと、鱗の成長方向が乱れ「渦」を巻くことが分かりました(図B)。これは、私たちの頭髪が「つむじ」を巻くのと同じ現象です。魚の鱗が骨芽細胞でできているのに対し、哺乳類の毛はケラチンを合成する表皮細胞でできています。毛と鱗では、同じ遺伝子群が異なる細胞を制御して、パターンを生み出しているのです。

本研究は、NIG-JOINT (89B2017)の支援の下、北里大学和田博士との共同研究として行われました。

Figure1

図:(図A)鱗に蛍光タンパク質(GFP、緑)を発現するエンハンサートラップ系統(hspGFFDMC13F;UAS:GFP)の成魚を、カルシウム染色(赤)したもの。鱗の縁(成長端)の骨芽細胞のみがGFPを発現する。(図B)表皮細胞においてWnt/PCPシグナル遺伝子を阻害した魚を、カルシウム染色したもの。鱗のパターンが乱れ「渦」を巻く。

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