2018/03/13

「二つの顔」を持つタンパク質 ~転写促進とメッセンジャーRNAの分解抑制~

Press Release

形質遺伝研究部門

Mbf1 ensures Polycomb silencing by protecting E(z) mRNA from degradation by Pacman

Kenichi Nishioka, Xian-Feng Wang, Hitomi Miyazaki, Hidenobu Soejima, Susumu Hirose

Development 2018 145:dev162461 DOI:10.1242/dev.162461

プレスリリース資料

Mbf1はストレス耐性などにかかわる転写因子で、いわば細胞を守る「正義の味方」です。Mbf1は核内で様々なストレス耐性にかかわる遺伝子の転写を促進することがわかっていました。

本成果では、Mbf1が転写促進活性とは異なる新たなメカニズムによってポリコーム抑制やストレス防御に関わっていることを見出しました。細胞には、パックマンと呼ばれる「悪役」酵素が存在し、メッセンジャーRNAを分解しています。このメッセンジャーRNAにMbf1が結合し、パックマンによる分解からメッセンジャーRNAを守っていることがわかったのです。Mbf1によって守られているメッセンジャーRNAが作るタンパク質には、パックマンの発現を抑えるポリコーム抑制やストレス耐性にかかわるものなどがありました。したがって、Mbf1は、ポリコーム抑制を強固にすると共に、「ストレス耐性遺伝子の転写の促進」と「メッセンジャーRNAの分解抑制」という二つの機能によってストレス防御を制御していたのです。

本研究は、情報・システム機構国立遺伝学研究所の広瀬進名誉教授らと佐賀大学医学部の西岡憲一講師らによる共同研究の成果で、科学技術振興機構さきがけ、日本学術振興会科研費と九州大学生体防御研究所機器利用型共同研究プロジェクトの支援を受けておこなわれました。

本研究成果は、英国科学雑誌Developmentに平成30年3月9日(グリニッジ標準時)に掲載されました。

Figure1

図キャプション:二つの顔を持つMbf1


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