2017/08/04

社会的順位がうつ様行動や脳内の遺伝子発現に影響する

Press Release

Hierarchy in the home cage affects behaviour and gene expression in group-housed C57BL/6 male mice

Yasuyuki Horii, Tatsuhiro Nagasawa, Hiroyuki Sakakibara, Aki Takahashi, Akira Tanave, Yuki Matsumoto, Hiromichi Nagayama, Kazuto Yoshimi, Michiko T. Yasuda, Kayoko Shimoi, Tsuyoshi Koide

Scientific Reports Article number: 6991 (2017) DOI:10.1038/s41598-017-07233-5

プレスリリース資料

うつ病の発症の多くで生活環境によるストレスが関わっていると考えられており、その中でも「社会的ストレス」は対応の難しいものの一つです。したがって、社会的ストレスが脳に与える影響を明らかにすることは、うつ病を軽減するための治療法の確立に役立つと期待されています。

本研究では、社会的ストレスがあると報告されていた実験動物のマウスを用いることで、うつ様行動を誘発する社会的ストレスの詳細を調べました。その結果、社会的順位(1)が「低い」とよりうつ様行動(2)を示すことが判明しました。さらに、社会的順位の脳内の遺伝子発現への影響を調べた結果、セロトニン受容体などの遺伝子の発現に影響することが明らかになりました。また、このうつ様行動と遺伝子発現の変化は抗うつ薬(3)の投与によって緩和されました。

本研究成果によって、社会的順位によるストレスが脳に与える影響を明らかにすることができました。うつ病の改善に向けた方法論の確立につながることが期待できます。

行動や性格には遺伝と環境の両方が重要な役割をはたしていますが、今回の研究では遺伝によらない環境の影響について遺伝研の行動遺伝学をテーマにしているチームと静岡県立大のチームが明らかにしました。

本研究成果は、平成29年8月1日10時(英国時間)に英国オンライン・ジャーナル Scientific Reports に掲載されました。

本研究は、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の堀井康行および小出剛准教授らと静岡県立大学の大学院生長澤達弘および下位香代子教授らとの共同研究として実施されました。

本研究は科学研究費補助金、特に新学術領域「マイクロ精神病態」(15H01298)、科学研究費補助金(15H05724, 16H01491 and 15H04289)、遺伝研共同研究(2013-B7)の支援を受けました。

Figure1

図:本研究では、ケージ内で形成される社会的順位がマウス個体の行動・性格や脳内の遺伝子発現に影響を及ぼすことを明らかにしました。


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