DNA複製のライセンシング(許可)反応の分子観察

微生物遺伝研究部門・荒木研究室

Flexible DNA Path in the MCM Double Hexamer Loaded on DNA

Kohji Hizume, Hiroaki Kominami, Kei Kobayashi, Hirofumi Yamada, and Hiroyuki Araki

Biochemistry. Publication Date (Web): May 1, 2017 DOI:10.1021/acs.biochem.6b00922

DNA複製反応が起こる細胞周期S期に先立ち、その前のG1期までに、複製が開始する染色体領域には“複製反応をこの領域から開始する許可反応(ライセンシング)”が起こります。ライセンシング反応は、複製反応に使用されるDNAヘリカーゼの主要な構成因子であるMCM複合体がDNA上に配位される反応であることが知られています。

今回、微生物遺伝研究部門の荒木弘之教授・日詰光治助教らのグループは、試験管内でこのライセンシング反応を再現し、その結果得られたMCMとDNAとからなる複合体を原子間力顕微鏡(AFM)により観察しました。従来は、リング状のMCM複合体が二つ向かい合わせに結合した構造の中央をDNAがまっすぐに通過していると考えられていたのに対し、実際に得られたAFM観察像では、DNAが側面から漏出していたり、DNAのループ状構造が形成されていたりするなど、自由なDNAの通過パターンが存在するようすが検出されました。また、京都大学工学部の山田啓文教授のグループと共同研究を行い、高分解能周波数変調(FM)AFMによる観察も行い、二つのMCM複合体とDNAとの高解像度観察にも成功しました。これらの観察結果から、これまで考えられていたモデルとは異なるメカニズムで、DNA複製のライセンシングが行われている可能性が示唆されました。

DNA複製反応は、多くのタンパク質因子がDNAに作用し、互いに構造変化をしながら進行していく動的な反応です。このような反応を理解するうえで、本研究のような分子観察を応用してDNA‐タンパク質の配位を解明していくことは、反応の分子機構を明らかにするうえで非常に重要なアプローチです。

Figure1

DNA上に配位した二つのMCM複合体のFM-AFM観察像。これまで考えられてきたように、二つのMCM複合体をまっすぐ通過するようにDNAが結合しているもの(A)に加えて、MCM複合体の側面からDNAが出てくるもの(B)や、DNAがループを形成しているもの(C)が観察された。