生命の設計図DNAは、不規則に折り畳まれる性質をもつ!

Press Release

Nucleosomal arrays self-assemble into supramolecular globular structures lacking 30-nm fibers

Kazuhiro Maeshima, Ryan Rogge, Sachiko Tamura, Yasumasa Joti, Takaaki Hikima, Heather Szerlong, Christine Krause, Jake Herman, Erik Seidel, Jennifer DeLuca, Tetsuya Ishikawa, and Jeffrey C. Hansen

The EMBO Journal Published online 12.04.2016 DOI:10.15252/embj.201592660

プレスリリース資料

国立遺伝学研究所の前島一博教授、米国コロラド州立大J. Hansen教授らのグループは、人工的に作成したヌクレオソームを国立研究開発法人理化学研究所(理研)の大型放射光施設スプリング8の理研構造生物学Iビームライン(BL45XU)の強力なX線を用いて、構造解析しました。ヌクレオソームを様々な塩(イオン)濃度の条件下で観察したところ、教科書に載っている規則的な構造は試験管内の特別な条件下(低塩) でしか作られないことが分かりました。そして生体内の条件下では、ヌクレオソームは染色体のような大きな構造を作るため、不規則に折り畳まれる性質を持っていることを明らかにしました(図)。
全長2メートルにもおよぶ長いヒトDNAは細い糸が「ヒストン」タンパク質に巻かれて「ヌクレオソーム」を作ります。1980年代から生物学の教科書では、このヌクレオソーム線維が規則正しく束ねられて「クロマチン線維」となり、更なる階層構造ができ、細胞のなかに収納されている様子が図示されてきました。2012年、前島教授らは規則正しく束ねられたクロマチン線維は存在せず、不規則に凝縮した状態で細胞のなかに収められていることを突き止めました。さらに、今回のDNAの不規則に折り畳まれる性質の発見によって、教科書に長年にわたって記載されてきた「規則正しいクロマチン線維」の改訂が進むことも期待されます。また今回の成果は、必要な遺伝情報が細胞の中でどのように検索され、読み出されるのかを理解するうえでの手がかりになります。

本研究成果は、平成28年4月12日(中央ヨーロッパ時間)にヨーロッパ分子生物学機構雑誌EMBO Journalオンライン版(オープンアクセス) に掲載されました。

本研究成果は、米国コロラド州立大Jeffrey C. Hansen教授、Ryan Rogge大学院生らのグループ、 理化学研究所 放射光科学総合研究センター 石川哲也センター長、引間孝明研究員、高輝度光科学研究センター 城地保昌チームリーダー、国立遺伝学研究所 前島一博教授、田村佐知子テクニカルスタッフの共同研究成果です。 JST・CREST「コヒーレントX線による走査透過X線顕微鏡システムの構築と分析科学への応用」、文部科学省科研費・新学術領域「少数性生物学」の支援を受けました。

Figure1

マイナス電荷を持ったヌクレオソーム線維(左)はプラス電荷の塩(Mg2+イオン)が無い状況では互いに反発して伸びる。低塩濃度では反発が少なくなり、教科書に載っている規則正しいクロマチン線維を作る(中央)。塩を更に加えると、反発がなくなり、どのヌクレオソームとの結合も可能になり、不規則で大きな構造を作る(右)。これが細胞内の染色体に相当すると考えられる。