クロマチンの「液体」のようなふるまい。

生体高分子研究室・前島研究室

Liquid-like behavior of chromatin

Kazuhiro Maeshima, Satoru Ide, Kayo Hibino, and Masaki Sasai.

Current Opinion in Genetics & Development, 2016, 37: 37-45. DOI:10.1016/j.gde.2015.11.006

全長2mにもおよぶヒトゲノムDNAは人体の設計図であり、直径約10µmの細胞核のなかに折り畳められています。教科書などでは、直径2nmのDNAはまずヒストンに巻かれ、ヌクレオソームと呼ばれる構造体になり、さらに折り畳まれて直径約30nmのクロマチン線維になると長年紹介されてきました。しかしながら、最近の知見では、細胞のクロマチンが従来考えられてきたような、いわば結晶のように規則正しく折り畳まれた階層構造ではなく、「液体」のように不規則で流動的な構造であることを明らかになってきました。このようなクロマチンの「液体」のようなふるまいは、規則性を持つ構造に比べて、物理的な束縛が少なく、より動きやすいという利点を持っていると考えられます。この総説においては、クロマチン構造とダイナミクスの最近の知見に基づき、クロマチンの「液体」様ふるまいの物理的意味や、このふるまいが遺伝子の発現、DNA複製/修復などのゲノム機能に果たしている役割を論じました。

本研究は名古屋大工学研究科・笹井理生教授との共同研究としておこなわれました。JST CREST、遺伝研・共同研究(A)の研究成果です。

Figure1

ヌクレオソーム線維(10-nm線維)がとても不規則な形で折り畳まれ、ドメインを形成している。クロマチンの「液体」のようなふるまいは、規則性を持つ大きな構造に比べて、物理的な束縛が少なく、より動きやすい。NPC, 核膜孔; NE, 核膜