凝縮・弛緩の物理的プロセスが姉妹DNAを分離させる。

生体高分子研究室・前島研究室

Chromosomes Progress to Metaphase in Multiple Discrete Steps via Global Compaction/Expansion Cycles

Liang, Z., Zickler, D., Prentiss, M., Chang. F.S., Witz, G., Maeshima, K., Kleckner, N. Cell, 161, 1124-1137 (2015). DOI:10.1016/j.cell.2015.04.030

細胞は、コピーした2セットのゲノムDNA(遺伝情報)を正確に2つの娘細胞に分離・分配します。この過程を厳密におこなうために、細胞はコピーしたゲノムDNAを姉妹染色分体として凝縮させ、分配に備えます。このような姉妹染色分体の凝縮は、従来、prophase, metaphaseの進行において連続的に起こると考えられてきました。しかしながら、今回、ハーバード大学のLiangらは、この凝縮が、ストレスのかかる凝縮 (mid prophase; Fig a)、ストレスから解放される弛緩 (late prophase; Fig b)、再びストレスのかかる凝縮 (metaphase; Fig c) からなる不連続な過程を経て起こることを明らかにしました。そしてこの過程は、混在する姉妹DNAの効率的な分離を以下のように可能にすると思われます。

mid prophase (Fig a)において、コピーされた姉妹DNA(Fig 赤・青部分)はジグザグとしたチューブ状の染色体に凝縮されますが、まだ、染色体軸(Fig. 黄部分)は染色体周辺に一本存在するのみで、姉妹DNAは混在しています。Late prophase (Fig b)において、染色体のストレスが解放されると、より安定な構造を求めて、姉妹DNAが反発します。染色体軸は分離してそれぞれの姉妹部の中心に移動し、姉妹DNAはそれを安定に取り囲むように放射状になります。そして、metaphaseで、姉妹それぞれの染色分体が凝縮し、姉妹DNAの分離が完成します (Fig c)。最初のストレスをかける凝縮過程は、コンデンシンII, トポイソメラーゼIIaの結合 (Fig a)、弛緩過程は、姉妹DNAを束ねていたコヒーシンの解離、トポイソメラーゼIIaによるDNAの絡りの解消 (Fig b)、再凝縮過程はコンデンシンI(Fig c)の結合によるものと考えられます。

本論文は、今まで不明であった姉妹DNAの分離メカニズムに物理的視点から迫るものです。

Figure1

(a) mid-prophaseコピーされた姉妹DNAはジグザグとしたチューブ状の染色体に凝縮する。染色体軸を黄色で、姉妹DNAを赤・青で表している。
(b) late-prophase染色体のストレスが解放されると、より安定な構造を求めて、姉妹DNAが反発し、染色体軸は分離してそれぞれの姉妹部の中心に移動し、姉妹DNAは放射状にそれを安定に取り囲む。
(c) metaphase.姉妹それぞれの染色分体が凝縮し、姉妹DNAの分離が完成する。


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