不完全な中心体がかき乱す細胞分裂 〜新しい染色体不安定化機構の提示〜

中心体生物学研究室・北川研究室

RBM14 prevents assembly of centriolar protein complexes and maintains mitotic spindle integrity

Shiratsuchi, G., Takaoka, K., Ashikawa, T., Hamada, H., and Kitagawa, D The EMBO Journal (2014) embj.201488979, Published online 10.11.2014; DOI:10.15252/embj.201488979

細胞が自らの遺伝情報を子孫に正確に伝えるには、細胞分裂の際に遺伝情報を収めた染色体を均等に分配する必要があります。多くの動物細胞では、微小管という繊維で作られた紡錘体と呼ばれる構造が二つの極にそれぞれ染色体を引っ張っていくのですが、それを可能にするためには、微小管を形成する極として働く細胞小器官、中心体が一回の細胞周期に一回だけ複製されなければなりません。

実は細胞の中には中心体を複数個作るのに十分な材料が存在しているのですが、普通の細胞ではここから余計な中心体が作られることはありません。しかし、ひとたび既存の中心体が外的要因などで失われると、未知の制御機構によって細胞内のあちらこちらで大量に中心体蛋白質の塊が生じ、やがて完全な中心体に置き換わることが知られていました。

今回、私たちはヒトやマウスの細胞において、中心体蛋白質STILと結合するRBM14という蛋白質を減らすことで、既存の中心体が健在であっても、それに似た現象が起こることを発見しました。このとき大量に生み出される中心体蛋白質の塊は構造的に不完全なものですが、微小管を作り出す力は部分的に保持しています。こうした細胞が分裂を始めると異常な紡錘体が形成されて、細胞の癌化などに繋がる危険をはらんだ染色体分配の乱れを生じてしまいます。

一般に癌細胞では中心体の過剰な増加が見られることが知られていますが、一方で完全な活性を持った中心体の増加はむしろ紡錘体の形成に致命的で、多くの場合細胞の死を招くとも考えられています。これまで多くの癌細胞で特に疑いもなく過剰な中心体だとされていたものの中には、もしかするとこのような不完全な中心体が含まれているかもしれません。実際RBM14は以前に癌抑制遺伝子としての可能性が指摘されています。通常の中心体複製機構と異なったこのような制御機構が細胞癌化等に関連があるかどうか、今後の解析が待たれるところです。

本研究は大阪大学生命機能研究科、発生遺伝学研究室の浜田博司教授、高岡勝吉助教との共同研究として行われました。

Figure1

  • Twitter
  • facebook
  • youtube