細胞遺伝研究部門・小林研究室
Population genomics of the fission yeast Schizosaccharomyces pombe
Jeffrey A. Fawcett, Tetsushi Iida, Shohei Takuno, Ryuichi P. Sugino, Tomoyuki Kado, Kazuto Kugou, Sachiko Mura, Takehiko Kobayashi, Kunihiro Ohta, Jun-ichi Nakayama, Hideki Innan PLOS ONE August 11, 2014 DOI:10.1371/journal.pone.0104241生物の設計図であるゲノム(全遺伝子情報)は染色体という「乗りもの」にのって細胞の核に収納されています。さらに、染色体は発生、分化、老化、生殖等の生理機能の制御においても中心的な役割を担っています。我々は、この染色体の機能維持に関わる非コードDNA領域(インターメアと呼んでいます)を同定するために研究チームとして取り組んで参りました。
従来の変異株を用いた遺伝学的な解析法では、インターメアの解析は非常に困難です。というのは、同じ機能のインターメアが複数個存在する可能性があること、またタンパク質をコードする遺伝子とは違い、変異の影響を受けにくいと考えられるからです。そこで今回、染色体研究のモデル生物「分裂酵母」を研究材料とし、多くの個体のゲノムを比較する「比較ゲノム解析法」を行いました。この方法では、ゲノムの比較により変異の入りにくい、つまり保存性の高い領域を探し出すことができます。保存性の高い領域は、染色体機能に重要な配列であり、そのために進化の過程で変化しにくかったと予想できます。我々は、分裂酵母野生株32種のゲノムを決定し、比較ゲノム解析を行い、インターメア候補領域を多数特定しました。
染色体の機能が異常になると、癌をはじめとする多くの疾患を引き起こすことが知られています。インターメアは染色体の機能維持に関わると考えられるので、今回の成果はそのような染色体異常の発症メカニズムの解明につながる重要な基礎研究となります。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「ゲノムを支える非コードDNA領域の機能」(代表 小林武彦・国立遺伝学研究所)の支援を受け、総合研究大学院大学、名古屋市立大学、東京大学、国立遺伝学研究所の共同研究として行われました。
分裂酵母 (Schizosaccharomyces pombe) を、DAPIという試薬で核を染色して蛍光顕微鏡で見た画像 (クレジット:名古屋市立大学)