2014/05/09

昼に光合成、夜に細胞分裂が起こるのはなぜか?その謎を解明!

Press Release

Translation-independent circadian control of the cell cycle in a unicellular photosynthetic eukaryote.

Shin-ya Miyagishima, Takayuki Fujiwara, Nobuko Sumiya, Shunsuke Hirooka, Akihiko Nakano, Yukihiro Kabeya, Mami Nakamura Nature Communications 5,Article number:3807 doi:10.1038/ncomms4807

プレスリリース資料

生物のある活動が、一日のうちの決まった時間帯に起こるという現象は、自然界でよく観察されることです。細胞レベルでもそのことは当てはまり、細胞分裂の起こる時間帯が生物によって限定されていることは、これまでにも観察されてきました。では、なぜ、そのような時間帯の制限が存在するのでしょうか。それはどのような仕組みによるのでしょうか。遺伝学研究所の宮城島進也特任准教授らは、細胞分裂の観察が容易な単細胞性の藻類(真核生物の紅藻)を用いて、その謎を突き止めることに成功しました。

紅藻は、光合成を行う水生生物で、夜、細胞分裂が起こることが知られています。宮城島特任准教授らは、まず、細胞分裂の進行をオンにするスイッチは何かを調べました。生物の細胞内に、概日リズムを刻む生物時計(細胞内時計)が存在することはよく知られているのですが、その時計に連動したスイッチがあるはずなのです。そして、詳しく解析した結果、E2Fと呼ばれるタンパク質がスイッチとしてはたらくことで、細胞分裂は夜引き起こされることが明らかになりました。

次に、そのスイッチを壊す実験を行って、時間帯の制限を解除しました。すると、細胞は昼夜問わず分裂するようになりましたが、それにもかかわらず、全体の細胞分裂数は若干減少しました。そればかりか、活性酸素が引き起こす酸化ストレスが昂進していることがわかりました。活性酸素は、細胞内のミトコンドリアの呼吸や葉緑体の光合成がエネルギーを作り出すときに発生する有害な副産物です。このことから、細胞分裂が起こる時期として、活性酸素のストレスが最も少ない時間帯が選ばれているという事実が見えてきました。すなわち、光合成を行う生物の細胞では、ミトコンドリアや葉緑体が活動する時間帯と細胞分裂が起こる時間帯が分けられることで、活性酸素の子孫細胞に与えるダメージが、最小限にとどめられているのではないかという推測が得られたのです。

宮城島特任准教授らの研究は、今後、さまざまな生物での細胞内時計と酸素毒性対応機構の研究の端緒となるものと期待されます。さらに今回、生物時計の研究においても重要な発見がもたらされました。E2Fスイッチは、従来の細胞内時計と異なる、遺伝子発現に依存しない新規の時計機構に誘導されている初の事象と考えられるのです。新たな時計機構の解明への期待も高まります。

Figure1

概日リズムによる真核藻類の細胞分裂制御。真核藻類は昼間葉緑体(細胞内の緑の部分)による光合成により成長し、夜間に分裂する。


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