2014/03/14

特殊な性染色体を持つ日本海イトヨのゲノムを解読

Press Release

Sex chromosome turnover contributes to genomic divergence between incipient stickleback species.

Yoshida, K., Makino, T., Yamaguchi, K., Shigenobu, S., Hasebe, M., Kawata, M., Kume, M., Mori, S., Peichel, C. L., Toyoda, A., Fujiyama, A., and Kitano, J. PLOS Genetics  10(3): e1004223 (2014) DOI: 10.1371/journal.pgen.1004223

プレスリリース資料

性染色体はオスになるかメスになるかを決定する性染色体で、例えばヒトの場合には、XYをもつと男性、XXをもつと女性になります。しかし、どの染色体が性染色体になるかは種によって様々で、近縁の種間でも性を決定する染色体が異なっている場合が多く知られています。しかし、このような性染色体の転換現象の生物学的な意義については多くが不明です。

今回、我々は、日本海イトヨと太平洋イトヨが異なる性染色体を持つことに着目し、これらの全ゲノムを決定することで、性染色体の転換現象が遺伝子の進化に与える効果を解析しました。日本には、太平洋イトヨと日本海イトヨの二種のイトヨが生息していますが、これまでの我々の研究の結果、日本海イトヨには、太平洋イトヨにはない新しく出現した性染色体(ネオ性染色体)があることが明らかになっていました。今回これら二種のゲノムを解読し比較することによって、日本海イトヨ固有のネオ性染色体の上では、XとYの間で遺伝子配列の分化が起こり始めるなど性染色体の特徴を既に示しつつあること、また、太平洋型の当該ゲノム領域と比較することで種間差を示す遺伝子が蓄積していることなどを見いだしました。

この成果は、これまで謎であった性染色体の転換という現象が、遺伝子の進化を促進することを示していることから、性染色体の進化と種分化との強いつながりを示すものとして評価され、米国科学誌のプロスジェネティックスに掲載されました。

この成果は、国立遺伝学研究所の生態遺伝学研究室と比較ゲノム研究室に加え、基礎生物学研究所、東北大学生命科学研究科、フレッドハッチンソン癌研究所、岐阜経済大学との共同研究です。

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上図:固有の性染色体をもつ日本海イトヨ
下図:日本海固有のネオ性染色体上で、X染色体とY染色体が、ゲノム配列レベルでまさに分化しつつあることを示す。


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