2014/03/04

イネの生殖組織特異的な小分子RNAの生合成経路

実験圃場・野々村研究室 植物遺伝研究室・倉田研究室

Rice Germline-specific Argonaute MEL1 protein binds to phasiRNAs generated from more than 700 lincRNAs

Reina Komiya, Hajime Ohyanagi, Mitsuru Niihama, Toshiaki Watanabe, Mutsuko Nakano, Nori Kurata, and Ken-Ichi Nonomura The Plant Journal Accepted manuscript online, 2014, doi:10.1111/tpj.12483

減数分裂は、品種改良など交雑育種の根幹となる生命現象であり、その分子機構の解明は安定な種子生産などにつながる重要な研究課題です。今回は、イネの生殖細胞で特異的に発現し、減数分裂進行に必須の役割を果たすMEL1蛋白質に着目しました。MEL1は、RNAサイレンシング(用語解説)のエフェクターとして知られるArgonaute(AGO)蛋白質です。

MEL1と結合する小分子RNA (MEL1-sRNA)を免疫沈降により回収し、塩基配列を解読しました。MEL1-sRNAは、75%が21塩基長であり、5′-末端の80%はシトシンでした。驚いたことに、MEL1-sRNAは機能未知の1,000カ所以上のゲノム領域に由来し、その多くは遺伝子間領域でした。私たちは、生殖成長移行後にそれらの領域から蛋白質をコードしない長鎖RNA(lincRNA)が700種類以上作られることを明らかにしました。その後lincRNAは二本鎖化され、等間隔に切断されて、MEL1-sRNAを含む21塩基長の小分子RNAが作られる可能性を示しました。

今回の成果から、RNAサイレンシング機構が植物の生殖細胞発生および減数分裂で果たす役割を考える上での重要な情報が得られました。

[用語解説] RNAサイレンシング: 20〜30塩基長の短いRNA(小分子RNA)を介して、それと相補的な配列を含む遺伝子の発現が抑制される現象

Figure1

生殖細胞特異的なイネArgonaute蛋白質MEL1の解析
(A) mel1突然変異体は種子不稔。 (B) MEL1遺伝子は葯(Anther)と胚珠(Ovule)の中の生殖細胞で発現(青)。 (C) 正常型 (1)とmel1変異体(2)の穂に対するRNA免疫沈降。 (D) MEL1-sRNAは1,000カ所以上の遺伝子間領域(青)に由来。 (E) 変異体では減数分裂染色体の対合を示すZEP1の伸長が起こらない。
A-Bは Plant Cell 19: 2583-2594 (2007)の図を、C-Eは Plant J (2014)の図をそれぞれ一部改変して掲載。


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