遺伝性筋疾患の新たな原因遺伝子Stac3

運動神経回路研究室・平田研究室

Stac3 is a component of the excitation-contraction coupling machinery and mutated in Native American myopathy
Horstick, E. J., Linsley, J. W., Dowling, J. J., Hauser, M. A., McDonald, K. K., Ashley-Koch, A., Saint-Amant, L., Satish, A., Cui, W. W., Zhou, W., Sprague, S. M., Stamm, D. S., Powell, C. M., Speer, M. C., Franzini-Armstrong, C., Hirata, H.* and Kuwada, J. Y.* (*Corresponding authors)
Nature Communications 4: 1952 (2013). doi:10.1038/ncomms2952

私たちはゼブラフィッシュ稚魚の動きを指標に運動・行動に関わる遺伝子のスクリーニングを行い、Stac3 (SH3 and cysteine rich domain 3)という遺伝子の変異が運動障害を引き起こすことを見出しました。Stac3はSH3ドメインとシステインリッチドメインを有すること以外に何も知られていない機能不明遺伝子でしたが、私たちの解析からStac3が骨格筋に発現し、Stac3タンパクがT管(transverse tubule)という部位で電位センサー分子とカルシウム放出チャネルに結合し、筋収縮時の小胞体カルシウム放出を制御することを明らかにしました。

Stac3遺伝子は脊椎動物で保存されており、ヒトのSTAC3遺伝子は12番染色体上12q13.3部位にありますが、近年この領域にアメリカ先住民ミオパチー(Native American myopathy)という遺伝性疾患の責任領域がマップされました。この疾患はアメリカ先住民ラムビー族で報告された、筋力低下、筋痙攣、呼吸困難の症状を伴う筋疾患で、ラムビー族では5,000人に1人の高頻度で罹患すると推察されています。しかし、その原因はこれまで不明で、治療法も確立されていませんでした。私たちはアメリカ先住民ミオパチーの原因遺伝子がSTAC3であるという仮説のもと、患者のSTAC3遺伝子を解析しました。予想通り、患者のSTAC3遺伝子には変異があり、STAC3がアメリカ先住民ミオパチーの原因遺伝子であることが証明されました。さらに、その変異により運動時のカルシウム放出量が少なくなること、骨格筋の収縮力が低下することも分かりました。

本研究でアメリカ先住民ミオパチーの原因が明らかになりましたので、今後は効果的な治療法の開発が期待されます。本研究で開発されたゼブラフィッシュStac3変異体はアメリカ先住民ミオパチーの病態モデルとして有用で、症状を軽減する治療薬の開発にも使われています。

本研究はミシガン大学のジョン・クワダ教授らとの共同研究で行われました。

正常なゼブラフィッシュ(Control)は尾を大きく左右に振り泳ぐことができますが、アメリカ先住民ミオパチーの病態モデルのゼブラフィッシュ(stac3 mutant)は筋力が弱く、ほとんど尾を振れません。 尾の動きを見やすくするため、ゼブラフィッシュの前半身は動かないように固定してあります。


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