2013/08/09

嗅覚入力に依存した脳左右半球での非対称的な神経細胞細胞の特異化

初期発生研究部門・川上研究室

Interhemispheric asymmetry of olfactory input-dependent neuronal specification in the adult brain
Kishimoto, N., Asakawa, K., Madelaine, R., Blader, P., Kawakami, K., and Sawamoto, K.
Nature Neuroscience 16, 884-888, 2013 doi:10.1038/nn.3409

脊椎動物の脳は左右非対称です。今回私たちは、モデル脊椎動物ゼブラフィッシュにおいてトランスポゾンを用いた遺伝子トラップ法による大規模なスクリーンを行い、脳の左右半球において非対称的にGFP(Gal4)を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュを見出しました。このトランスジェニックフィッシュにおいては、zinc finger蛋白質をコードするMyt1遺伝子内にトランスポゾンが挿入され、Myt1発現神経細胞を可視化することができました。Myt1発現細胞は、脳室帯—脳室下帯で新生され嗅球に移動する一群の細胞に含まれており、左半球により多く存在していました。私たちは、Notchシグナルが右側の脳室帯—脳室下帯におけるMyt1陽性神経細胞の産生を負に制御していること、ゼブラフィッシュの左側の鼻を塞ぐと左半球におけるNotchシグナリングが亢進しMyt1陽性神経細胞が減少すること、Notchシグナリングを阻害すると左側の鼻に依存した行動に異常が見られること、を明らかにしました。このことから、嗅覚入力がNotchシグナルを介して機能的神経細胞の左右脳半球における非対称的な新生を制御しているモデルを提唱しました。

この研究は名古屋市立大学・岸本博士、澤本博士との共同研究として行なわれました。

ゼブラフィッシュ終脳、脳室帯—脳室下帯において新生されるMyt1陽性細胞の左右非対称な分布。


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