2013/08/06

細胞核内のDNAの濃度が染色体の凝縮に影響する

細胞建築研究室・木村研究室

Intranuclear DNA density affects chromosome condensation in metazoans.
Yuki Hara, Mari Iwabuchi, Keita Ohsumi, Akatsuki Kimura
Mol. Biol. Cell August 1, 2013 vol. 24(15) 2442-2453 doi: 10.1091/mbc.E13-01-0043

私たちヒトをはじめとする真核生物において、遺伝情報を担う染色体は、細胞が分裂する際には凝縮し、一本一本の染色体が「分裂期染色体」と呼ばれる棒状の構造を形成します。同じ個体の中でも、DNAの塩基配列の長さは変わらないのに、分裂期染色体の長さは変わることが知られています。その理由としてこれまで、発生ステージによって染色体を凝縮させる蛋白質の種類や量がかわることによることがわかっていました。今回、細胞建築研究室の原裕貴(総研大遺伝学専攻、現在はドイツEMBL研究員)と木村暁は、名古屋大学の大隅圭太博士、岩渕万里博士との共同研究により、染色体凝縮が「細胞核内のDNAの濃度」により制御されるとする新しいメカニズムを提唱しました。まず、線虫C. elegansを用いて、初期胚発生過程において、細胞核が徐々に小さくなる過程で、分裂期染色体の長さも徐々に短くなることを見いだしました。遺伝子操作により細胞核を大きくしたり小さくしたりすると、それに相関して同じ発生ステージでも分裂期染色体も長くなったり短くなったり変化しました。さらには、細胞核内のDNAの量を減らすと分裂期染色体は長くなり、DNA量を増やすと分裂期染色体は短くなることも明らかにしました。このことは、間期核内で染色体一本あたりの核の大きさが大きいほど分裂期染色体は長くなることを示しています。この制御の一般性を検討するためにカエル卵の無細胞系を利用して細胞核の大きさを小さくしてから分裂期染色体を形成させると、やはり分裂期染色体は通常よりも短くなることを見いだしました。以上の観察は、染色体の凝縮が核の大きさやDNAの量と言った物理的な制約に影響をうけることを示す新たな知見です。

(A)細胞核内DNA濃度が染色体凝縮に影響する。核が小さくなると分裂期染色体も短くなる。核内の染色体DNAの量が減ると、分裂期染色体は長くなる。
(B)分裂期染色体の例(線虫のサンプル)。


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