2013/01/09

マウス生殖細胞の雄性分化誘導因子を同定

発生工学研究室・相賀研究室

Nodal/activin signaling promotes male germ cell fate and suppresses female programming in somatic cells.
Wu Q, Kanata K, Saba R, Deng CX, Hamada H, and Saga Y
Development, 2013 Jan;140(2):291-300. DOI: 10.1242/dev.087882

哺乳類において精巣を作るか卵巣を作るかという性の決定機構は比較的よく理解されています。Y染色体にのっているSRY遺伝子が発現すると精巣が、発現しないと卵巣ができます。また生殖細胞が精子になるか卵子になるかという決定は、生殖細胞の前駆体である始原生殖細胞が精巣に入るかあるいは卵巣に入るかによって決まります。しかし、実際に生殖細胞の性分化誘導機構は理解されていませんでした。今回総研大(D5)の呉泉君が雄性生殖細胞の誘導因子を同定しました。彼はNodalシグナル系が雄性生殖細胞特異的に活性化していることを見いだし、特異的な阻害剤及びNodalシグナル系の条件付きノックアウトマウスを用いた解析を行いました。その結果、体細胞から分泌されるFGF9により生殖細胞でNodalが活性化し、その下流で雄性特異的遺伝子Nanos2が誘導されることを明らかにしました。またこの時同時に、FGFシグナルは体細胞にも機能し、主にActivinの活性化を介して体細胞の雌化を抑制することも示しました。

Figure1

雄の性分化にTGFbシグナルであるNodal/Activinが重要な機能を果たす。FGF9の下流で体細胞ではActivinが誘導され雌化因子(BMP2、Follistain)を抑制し、体細胞の雌化を抑制する。一方、生殖細胞で特異的に活性化するnodalシグナルは生殖細胞が雌化することを抑制し、雄化遺伝子(Nanos2, Dnmt3L)の発現を誘導する。


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