Ms. Aishwarya Gurumurthy


遺伝子発現ネットワークと病気の関係性を探る

質問1 Gurumurthy 研究員は主に二つの研究をされていますね。それらについて教えてください。

私たちの体の中の生物学的システムは、遺伝子発現のネットワークにより支配されています。がんや希少性遺伝性疾患を理解する上で、RNAの発現制御のしく みを調べ表現型と遺伝子型の関連を知ることは、極めて重要です。 そこで私は遺伝子発現ネットワークと病気の関係を探るために、次世代シーケンサーを使用 したRNAシーケンシングによる、全ゲノムRNA発現の解明を目指しています。

たとえば、多発性過誤腫が特徴のコーデン病は希少常染色体優性遺伝疾患で、様々ながんに罹患するリスクが高いとされています。コーデン病患者の8割 に腫瘍抑制因子PTEN遺伝子の変異が見られます。10q23.3遺伝子座に位置するPTEN遺伝子は、正常時にはPI3キナーゼ/Aktの経路を阻害 し、G1期の細胞周期の進行阻止や細胞消滅(アポトーシス)をもたらします。

コーデン病にPTENの遺伝子変異はよく認められていますが、我々の家系では遺伝子の機能を混乱させる原因となるコピー数多型(CNV)や一塩基多様性(SNV)が見つかっておらず、『コーデン病の原因は何だ』という問いが生まれました。

その答えを探るためにコーデン病の患者から作成したiPS細胞のRNAシーケンシングを行い、遺伝子発現の増減を分析しました。その結果、アポトー シスを回避するITGA11とFDZ2の発現上昇が認められました。ITGA11はPTENの腫瘍抑制に拮抗しているようです。しかし、私はこれらの二つ の遺伝子が原因の候補遺伝子とは考えていません。さらに患者からのiPS細胞を分化させ、同じように分析する必要があります。

また、分野は少し違いますが、遺伝子砂漠とよばれる遺伝子がない領域と病気の関連にもとても興味があります。Chromosome Conformation Capture (3C法)と呼ばれる手法を使うと、クロマチンループの形態変化の結果、標的遺伝子と遠隔の調整エレメントとの関係を分析できます。

染色体9p21は血管系疾患である頭蓋内動脈瘤(IA)や冠状動脈疾患(CAD)といった血管系疾患に関係する遺伝子座です。ゲノムワイド関連研究 (GWAS)により、このような病気と関係する一塩基多型(SNP)を確認されています。9p21遺伝子座はエンハンサーの周囲に宿る33の遺伝子砂漠地 域が知られています。

私の研究では、脳動脈瘤の増大を引き起こす遺伝子の発現と遺伝子砂漠の制御的役割とに焦点を当てました。RNAシーケンシングで遺伝子発現を測定し ますが、さらに3C法を用いることで、調節エレメントとターゲット遺伝子間における長距離の相互作用の研究ができます。これにより、遺伝子座9p21のあ らましがさらに詳しくわかることでしょう。

質問2 遺伝研を知ったきっかけを教えてください。

以 前、私が母国インドの”Center for Cellular and Molecular Biology”のLakshmi Rao博士の下で働いていたとき、Rao先生が遺伝研を訪れたことがありました。帰国したのち、先生が遺伝研における施設や研究の充実ぶりを話してくださ いました。それで、私も遺伝研で働くことにとても興味がわいたのです。

質問3 遺伝研の魅力はどこだと思いますか。

遺伝研には世界レベルの施設が整っています。たくさんの選択肢のなかから、自分が取り組みたい研究にはなんでも取り組めるという点で、研究者たちに 縛りがありません。それに自分の研究に必要なものはなんでも揃います。最先端の技術や技能を駆使した研究ができるというだけではなく、世界中から招かれた 研究者や科学者の講義・セミナーにも参加でき、とてもためになる学びの場となっています。このような世界に名だたる研究所で研究生活を始めたことは、きっ と自身のキャリアを高めてくれるものと信じています。
コミュニケーションに関して言えば、遺伝研に来る前は、日本人とコミュニケーションが取れるか少しおじけづいていたところがありました。が、いざ来てみると、所内では何も問題を感じませんでした。
ま た、遺伝研内で週に1回、無料の日本語授業を受けています。お店に行ったり、どこかに出かけたりする時には、日常会話レベルの日本語が必要です。私はベジ タリアンなので、食べ物に何が含まれているのか、お店の人に聞いて、その答えを理解しなければいけません。そういった基本的なやり取りをするにあたって、 日本語の授業がとても役に立っています。

質問4 三島市の印象を聞かせてください。

私はインドのハイデラバード出身なのですが、ハイデラバードは大都市なので交通量も騒音もすごいんです。三島は、ハイデラバードとは全く対照的で、 とても静かでいいところだと思います。三島の自然~青々した緑や透き通った川が大好きです。あまり遠出したくないときは、源兵衛川のほとりを散歩します。
自転車通勤の行き帰りには、毎日富士山の景観美を楽しんでいます。都会の雑踏から離れた、風光明媚な富士山の眺めにはただ息を呑むばかりです。
ベジタリアンなので日本料理はあまり味わったことがありませんが、ふるさとの料理が恋しくなったときには市内にあるインド料理店に行きます。こんな小さな街で、インド料理店を3つも見つけたんですよ!

質問5 休日はどのように過ごしていますか。

旅行が大好きなので、夫が浜松にいた頃には、二人でいろんなところを訪れました。日本には伝統とモダンが混じりあっています。日本庭園や神社、山が 大好きですが、超高層ビルのような現代建築も同じように大好きです。印象に残っている場所を3つ挙げるなら、個人的には日光、東京、広島ですね。
それから、富士急ハイランド!夫も私も絶叫マシンが大好きなんですよ。インドにも絶叫マシンはありますが、日本のものは動きが複雑だし、スピード感も違います。
それからインターネットで動画を見ながら、折り紙を練習しています。難しいですね。同僚が作り方を見せてくれたものを、自分も自宅で折ってみるのですが、 何かが違うんです。きちんと紙を折るために、爪をもう少し伸ばした方がいいかなと思っています。花が大好きなので、ユリ、ダリアやバラといったモチーフで 花を折っています。できあがった作品はグリーティングカードに貼ったりしています。
絵画も好きで、特に自然画をたくさん描きます。好きな音楽を聴きながら絵を描くのは、私にとって最高のリラックス法なんです。
日本語の学習にも、毎日情熱を持って取り組んでいます。漢字の成り立ちを知るのはなんとも興味深いです。昨年12月には日本語能力試験の5級を受験し、合格したんですよ。とてもいい経験になりました!

質問6 将来の目標は何ですか。

さらに研究を続け、興味深い成果を出したいです。三島が大好きなので、夫がまた日本に赴任して、私も遺伝研で研究が続けられたらいいなと思っています。それに日本語がもっと流暢に話せるようになって、さらに上級の日本語能力試験に合格したいですね。

(2013年5月 掲載)
音声おこしおよび翻訳:三浦智香子(総務・教育チーム)


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