
遺伝学研究所の生物遺伝資源センターで運営されているNIG Fly Stocks(ハエストックセンター)は、世界中の遺伝学研究者の求めに応じて17,000種に及ぶキイロショウジョウバエのRNAi遺伝子機能欠損変異系統を提供している。現在、世界中にキイロショウジョウバエのリソースを提供するストックセンターはここと京都工芸繊維大学で合わせて4千系統、他にはアメリカとオーストリアにしかない。まさに世界のキイロショウジョウバエの遺伝子の機能の研究に欠かせないこのライブラリを立ち上げたのが、上田 龍教授である。
どの遺伝子がどのような働きをしているかを調べるには狙った特定遺伝子の機能を破壊して表現型の変化を調べればよい。RNAi(RNA干渉)法とは、細胞内に二本鎖のRNAを注入することで、細胞中の同じ塩基配列を持ったRNAを選択的に破壊するという手法だ。RNAi法を用いることで狙った遺伝子の機能が欠損した変異体を作ることが可能になる。この手法自体は1995年ごろから知られており、ショウジョウバエでも二本鎖RNAを胚に注射器で注入することで変異体を取得できることが確かめられていた。だがこの方法には、手間がかかることと、特定の部位だけを狙って二本鎖RNAを入れ込むことが難しいという課題があった。
「この研究で私に業績はありません」
遺伝子機能の研究で“体内カレンダー”の謎を解き明かす